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時給保障は日本で消え、豪州で法になった

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Dice

現役配達員が運営

時給保障は日本で消え、豪州で法になった
この記事の目次
  1. 1.日本では「安定して稼げる」
  2. 2.豪州は法にした
  3. 3.保障される人ほど、急ぐ理由がなくなる
  4. 4.先に始めた街では、働ける時間が減った
  5. 5.法になっても、待っている時間は無給のまま
  6. 6.出典

鳴らない時間があっても、走った分の時給は出る。そう聞いたら、悪くない話に思えます。

2025年にUber Eatsが試した「フラットレート」です。仙台と横浜で始まり、その年の9月には東京や大阪を含む11都市に広がりました。

それが、1年たたずに使えなくなりました。

ほぼ同じ設計のものが、2026年8月からオーストラリアでは法律になっています。時給はおよそ3,000円。同じ中身が、日本では消えて、豪州では法になりました。

日本では「安定して稼げる」はずだった

フラットレートが始まったとき、期待されていたのは安定でした。鳴らない時間があっても、走った分の時給が保障される。読めない日払いの世界に、床ができるように見えました。

実際は違いました。

まず、案件を選べません。適用中に拒否やキャンセルができるのは1時間に1件までで、それを超えると通常の報酬制度に戻されます。保障を守ろうとすると、飛んできたものをほぼそのまま受けることになります。

遠い店、重い荷物、入りにくい建物。断りたい案件ほど断れない。

そして、回ってくる案件が妙に悪い気がしてくる。鳴りそのものが絞られている気もしてくる。どちらも外からは確かめようがないので、疑いだけが残ります。

Aide編集部が稼働した範囲では、2026年4月以降に使えなくなりました。Uber Eatsは終了もその理由も公表していないので、何が決め手だったのかは分かりません。ただ、評判が芳しくなかったのは確かです。

豪州は法にした

同じ時期、オーストラリアは逆の方向へ進みました。

公正労働委員会という政府の機関が、2026年8月に配達員の最低報酬を決めました。労働組合とUber Eats、DoorDashが合意した案が土台です。8月17日から動いています。

金額は車両によって少し変わりますが、日本円でおよそ3,000円前後。2027年分の額まで、すでに決まっています。

払われ方は日本と似ています。1件ごとに固定額が出るのではなく、一定期間の配達中の時間をまとめて計算して、足りなければ後から差額が払われる形です。

違うのは、やめられないことです。プラットフォームの都合で静かに終わる試験ではなく、命令として動いています。日本のフラットレートが消えたこと自体が、任意でやる仕組みの弱さを示していました。

保障される人ほど、急ぐ理由がなくなる

配達中の時間で時給を保障する。この考え方は日豪で共通していて、ひとつ変な性質を抱えています。

保障額は配達中の時間で決まります。速く届けても、その分だけ額が増えるわけではありません。

すでに保障額を上回って稼いでいる人には、これは関係ありません。速く回れば件数が伸びて、報酬もそのまま増えます。

引っかかるのは保障を受ける側です。報酬が時間だけで決まるので、速く届けても手取りは変わりません。 急ぐ理由がなくなります。

制度が助けようとしている人ほど、効率よく動く動機を失う。きれいな設計とは言えません。

豪州の命令も、そこは完全には塞げていません。休憩や、途中で放棄した配達の時間は計算から外れますが、連続して働いていて遅いだけの人を止める仕組みはありません。

そして遅く動く人が増えるほど、補填は膨らみます。プラットフォームからすれば、単価を上げるより、誰がいつオンラインにできるかを管理するほうが安く済む。

先に始めた街では、働ける時間が減った

保障が緩みを生み、緩みが締め付けを呼ぶ。この先に何が起きるかは、すでに答えを出した街があります。ニューヨークです。

ニューヨーク市は2023年12月から、レストラン配達アプリに最低報酬を義務づけました。豪州より3年近く早く、同じことをやっています。

アプリ側がどう対応したかは、市の担当部局が自分で書き残しています。シフト制を用意して、シフト外のログインを制限した。 いつでもオンラインにできる状態を、やめたわけです。

理屈は分かります。暇な時間に人が溢れたままだと、1人あたりの配達時間が短くなって補填ばかり増える。働く人数と時間を管理できれば、補填を抑えられます。

時給の下限は決まりましたが、いつ働くかは自分で決められなくなりました。

決まったのは「1時間あたりいくら」で、「いつオンラインにできるか」は決まっていません。好きなときに働ける自由と、時間あたりの保障は、思ったより仲が悪いようです。

報酬水準そのものは上がっています。2026年4月からは時給22.13ドル。**上がった時給と、減った自由度。**どちらを取るかという話で、単純に悪くなったとは言えません。

法になっても、待っている時間は無給のまま

豪州に話を戻します。働ける時間の話を別にしても、いちばん大事なところが日本と同じまま残りました。

保障されるのは案件を受けてから届けるまでで、次の案件を待つ時間には何もつきません。 1時間オンラインにしていて配達が30分なら、残りの30分は計算に入らない。

鳴らなかった時間まで含めた実時給で見ると、額面とはかなり違う数字になります。

燃料代も整備費も自分持ちなのも変わりません。しかも豪州の公正労働委員会は、この金額では配達員の経費を十分に賄えないと自ら認めています。 制度を作った側が足りないと言っている。

つまり豪州でも、「安定して稼げる」にはなっていません。日本で起きた期待外れは、法律になった国でも起こりえます。

豪州は日本と違って、やめられません。ただ、続くことと稼げるようになることは、別の話です。法で守られた配達員の手取りが本当に増えるのか、答えが出るのはこれからです。

出典

海外の資料はいずれも英語です(2026-08-26確認)。


※この記事は公開情報をもとにした一般的な整理です。豪ドルの円換算は執筆時点のおおよその水準です。豪州の最低基準は暫定的なもので、今後見直される可能性があります。最新の内容はFair Work Commissionの公式情報でご確認ください。

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