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出前館3Qの
「売上減・赤字倍増」の中身
見出しで決めつける前に

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現役配達員が運営

出前館3Qの「売上減・赤字倍増」の中身 ― 見出しで決めつける前に
この記事の目次
  1. 1.下方修正の理由とGMVの基本
  2. 2.注文はむしろ反転していた
  3. 3.売上「減」のカラクリ
  4. 4.赤字倍増の正体は原価と投資
  5. 5.体力(手元資金)はどうか
  6. 6.この成長は続くのか
  7. 7.次の決算で見ておきたい指標
  8. 8.出典

出前館が2026年7月15日、2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の通期見通しを下方修正しました。

最終損益は、これまでの40億円の赤字予想から、78億円の赤字へと拡大する見通しです。ニュースの見出しは「赤字拡大」「売上減」の一言で流れていきます。

ただ、現場の感覚とはむしろ逆に見えます。「3月以降、注文はむしろ増えている」という声も出ているからです。

決算短信と、同じ日に出た決算説明会資料まで読むと、この「見出しの印象」と「中身」がかなりズレた決算だとわかります。数字の見かけに引っ張られる前に、順番に中身を追ってみます。

下方修正の理由とGMVの基本

短信が挙げている修正理由は一つ、明快です。

オーダー数やGMV(流通取引総額)が期初想定より下回る見込みのため、売上高を392億円、営業利益を△79億円に修正

つまり注文の総量が計画ほど伸びなかった、という説明です。通期予想は売上392億円、営業損益△79億円、最終損益は従来の△40億円から△78億円へと下がりました。配当は引き続き無配です。

もっとも、当初の売上計画441億円に対して392億円への引き下げなので、需要の戻りを楽観していた面はあります。ただ、赤字が倍増したのは売上の未達だけが理由ではなく、後述する「攻めの投資」を積み増した結果でもあります。

ここで一度、出前館が重視している指標を押さえておきます。会社が決算で軸にしているのは次の3つです。

  • GMV(流通取引総額) … アプリ上で動いたお金の総額(=市場の大きさ)
  • オーダー数 … 注文の件数
  • アクティブユーザー数 … その期間に1回以上注文した人の数

GMVは「商品代金+配達料+手数料」の合計で、出前館の売上はそのうち手数料として受け取る一部です。この3つが伸びるかは、配達員にとって「案件量の先行指標」でもあります。順に見ていきます。

注文はむしろ反転していた

まず事実として、今回の第3四半期(2026年3〜5月)は、主要指標がそろって前年比プラスに転じています。

FY26 3Q実績前年比前四半期比
オーダー数1,659万件108%125%
アクティブユーザー数283万人102%115%
GMV427億円103%

数四半期にわたって前年比85〜93%と縮小が続いていたところから、この四半期で初めてプラスに反転しました。月次で見ると、オーダー数は3月104%、4月・5月は110%と伸びています。

現場で「最近また鳴るようになった」という体感は、この数字に表れています。

売上「減」のカラクリ

ところが、3四半期の累計で見た売上高は前年より減っています。

3Q累計(2025/9〜2026/5)前年同期今期
売上高301.7億円282.9億円(▲6.2%)
営業損失△30.8億円△63.7億円
最終損失△31.1億円△63.4億円

注文は増えたのに売上は減る。ちぐはぐに見えますが、これには理由があります。

最大の要因はクーポンの会計処理の変更です。出前館は前年(2025年8月期)の第2四半期から、特定ユーザーに配る「付与型クーポン」の利用額を、広告宣伝費(費用)ではなく、売上高からマイナスする処理に切り替えました。営業利益は変わりませんが、売上高は機械的に小さくなります。

問題は比較の対象です。前年の第1四半期だけはまだ旧処理で、クーポン分が差し引かれていない「かさ上げされた売上」でした。そこと比べているので、今期が減ったように映るわけです。

会社は、同じものさし(クーポン控除後)で並べ直した通期の参考値も出しています。

通期売上高(同一基準)今期見通し前期実績前年比
クーポン控除後392億円383億円102%

通期で見れば、同じ基準の売上高は前年比102%と、むしろ成長へ転じる見込みです。つまり3四半期累計の「▲6.2%」も、会計基準のズレと、反転が第3四半期からだったことによる見かけの部分が大きいわけです。

もう一つ、反転が第3四半期からだったことも効いています。前半(2025年9月〜2026年2月)はまだ需要の谷で、後述のマーケティングも本格再開前でした。累計はその谷を含むので、四半期単体でプラスに転じても累計は前年割れに見えます。

念のため付け加えると、この会計変更はごまかしではありません。買い手に配るクーポンは売上のマイナスとして扱うのが会計基準の原則で、むしろ売上を小さく見せる、自社に不利な方向の処理です。

会社が同一基準の実態(+2%)まで自分から開示している点も含め、どちらかといえば誠実な対応といえます。見出しの「売上減」だけで早合点しないことが大事です。

赤字倍増の正体は原価と投資

では、なぜ赤字は倍増したのか。ここが今回の決算のいちばんの中身です。

まず大きいのは売上原価の膨張です。3四半期累計で、売上総利益(粗利)は前年の44.0億円から1.4億円へとほぼ消えました。売上原価が売上に肉薄し、原価率は99%超。後で見る「お店価格」や「送料無料」の原資負担が、この原価側に効いています。

一方で販管費(広告・人件費など)は、累計では前年の74.8億円から65.1億円へ減っています。ただしこれは、前年にクーポンが広告費へ計上されていた分の会計変更による見かけの減少です。

実際にはこの第3四半期にマーケティング投資を再開しています。半額キャンペーンやテレビCMを打って、四半期単体の販管費は前年同期の19.5億円から26.2億円へ増加。営業損失もこの四半期だけで32億円と、投資のピークになりました。

つまり赤字倍増の正体は、(1)お店価格・送料無料の原資で原価が膨らみ粗利が消えたこと、(2)加えて第3四半期にマーケ投資を再開したこと——の合わせ技です。削ってしぼんだのではなく、意図的にアクセルを踏んで赤字を膨らませた面が大きいといえます。

会社は「積極投資は第3四半期がピークで、第4四半期は営業赤字が△32億円から△15億円へ改善する見込み」としています。

投資の中身は、大きく二つです。

一つは「お店価格で出前館」。店内と同じ価格で注文できる仕組みで、参加店舗は2025年9月の250店舗から、7月には全国23,000店舗超まで一気に広がりました。

もう一つは「1円以上の注文で送料無料」(LYPプレミアム会員向け)。この二つで価格を下げ、注文を取りにいっています。

では、その値引きは誰が負担しているのか。決算説明会資料が答えを書いています。

  • 加盟店 … お店価格で「1件あたりの利益の減少」を受け入れ、より多くの客にリーチする
  • 出前館 … 送料無料などの原資を「限界利益」から出し、再投資に回す

限界利益とは、売上から配達コストなど直接かかる変動費を引いた1件あたりの粗利のこと。出前館はこれを値引きの原資に充てています。

この送料や配達まわりの負担が、さきほどの売上原価の膨張につながっています。つまり、加盟店が利ざやを、出前館が送料の原資を出し合って価格を壊し、注文を買っている——これが、原価が膨らんだ中身です。

配達員の立場で一点だけ区別しておくと、配達員への報酬は「売上原価」側(配達コスト)に入ります。販管費に出てくる人件費は社員の給与で、配達員報酬とは別物です。今回原価が膨らんだのは、配達関連のコストが増えたという読みと整合します。

体力(手元資金)はどうか

赤字を先行させて注文を買う戦略は、原資が続くかが問われます。

第3四半期末の現金及び預金は214.7億円で、前期末の285.4億円から9か月で約71億円減っています。自己資本比率は67.8%と依然高く、決算短信に「継続企業の前提に関する注記」はありません。すぐに立ち行かなくなる段階ではありませんが、現金が着実に目減りしているのも事実です。

会社は「投資は第3四半期がピーク」としており、限界利益率も5月には18%まで回復したとしています。攻めた分をここから緩めて、採算を戻していく、という筋書きです。

この成長は続くのか

ここからは、正直まだ答えが出ていません。強気・弱気の両方の見方があるので、両方を並べておきます。

強気に見れば … 数四半期続いた谷を抜け、オーダー・ユーザー・GMVがそろって反転した。限界利益率も5月に18%まで戻り、投資は3Qがピークで4Qは緩む見込み。親会社(LINEヤフー/ソフトバンク系)の後ろ盾もある。アクセルを緩めても回る設計だ、という見方です。

弱気に見れば … 今の反転は、送料無料や半額といった販促を燃料に買った需要かもしれない。原資は出前館の限界利益と現金で、現金は9か月で71億円減った。プロモを緩めたときに、増えた客と注文が残るかはまだ検証されていない、という見方です。

どちらに転ぶかは、次の決算を見るまで分かりません。

ただ、現場を走る側の本音を言えば、この注文の伸びは、ここで途切れずに続いてほしいと思います。目先は「鳴ること」がいちばんですが、それだけでもありません。出前館が赤字続きで縮んでウーバー一強になれば、競争が消えて報酬や条件は悪化しやすい。出前館が生き残ることも、配達員には他人事ではないのです。

今の勢いが「キャンペーン限りの花火」で終わるのか、地に足のついた日常需要に変わるのか——そこだけは、期待を込めて次の決算を見たいところです。

もっとも、お店価格や送料無料は1件あたりの取り分を削る方向でもあります。量が戻っても単価がついてくるかは、期待とは別に冷静に見ておきたい点です。

次の決算で見ておきたい指標

四半期の決算は、配達員にとって「自分の案件量の先行指標」でもあります。次に見ておくと、ニュースの見出しに振り回されずに読めます。

  • オーダー数・GMV … 量の回復が続くか。プロモを緩めても伸びが残るか
  • 原価率・限界利益率 … 値引きの原資を抑えて、採算が戻っていくか
  • 手元資金 … 攻めを続ける燃料がどれだけ残っているか

なお、出前館がここまで来た長い歴史(実はもともと黒字の会社だった、という話)は、年に一度の通期決算のときに改めて振り返る予定です。

出典

  • 株式会社出前館「2026年8月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年7月15日)
  • 株式会社出前館「2026年8月期 第3四半期 決算説明会資料」(2026年7月15日)
  • 株式会社出前館「業績予想の修正に関するお知らせ」(2026年7月15日)
  • 出前館 IR資料室:https://corporate.demae-can.co.jp/ir_information/library/report01.html

本記事は公開情報を配達員の目線で整理したものです。投資判断を目的としたものではなく、企業評価や売買を勧めるものでもありません。数値は開示資料にもとづきますが、最新の状況は公式のIR資料をご確認ください。

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