配達員の経費
どこまで落とせる?
Dice
現役配達員が運営

この記事の目次
配達を仕事にして最初に戸惑うのが、確定申告の経費まわり。
ガソリン代・スマホ代・配達バッグ——どこまでが経費になるのか、走り始めてから気づくことが多いです。
よく聞く「これ経費にできたの?」を、実際に落とせるものと、按分でつまずきやすい所に絞って整理します。
経費になるものの代表例
配達という仕事のために使ったお金は経費にできます。わかりやすいのはこのあたり。
- ガソリン代(車・バイク配達の場合)
- 自転車・バイクの修理代、部品代
- スマホの通信費(アプリを動かすために必須)
- 配達バッグ、保温・保冷グッズ
- スマホホルダー、モバイルバッテリー
- レインウェア、防寒着(配達専用なら)
判断の軸はシンプルで、「配達してなければ買わなかった/使わなかった」と説明できるかどうか。ここが言えるものは経費に乗せやすいです。
つまずきやすいのは「家事按分」
迷いが集中するのがここです。スマホは配達中だけでなくプライベートでも使います。
こういう仕事とプライベートで共用しているものは、全額ではなく仕事で使った割合だけを経費にします。これを家事按分(かじあんぶん)と呼びます。
例:スマホ代が月1万円で、そのうち配達アプリの稼働に使っているのが半分くらい → 月5,000円を経費に計上。
割合は、なんとなくで決めるより根拠になる数字を持っておくと強いです。よく使われるのはこのあたり。
- バイク・車のガソリン代や車両費 … 「業務の走行距離 ÷ 総走行距離」、または稼働時間の割合で出す
- スマホの通信費 … 配達で使った時間や日数の割合
たとえば月に走った距離のうち配達ぶんが7割なら、ガソリン代も7割を経費に——という考え方です。
大事なのは、なぜその割合にしたかを自分で説明できること。走行距離や稼働時間という"数えられる根拠"があると、ここが言いやすくなります。盛りすぎは後で説明できなくなるので要注意。
ひとつ見落としやすいのが按分の整合性です。バイクのガソリン代を走行距離7割で按分したなら、そのバイクにかかる任意保険・修理費・消耗品も同じ7割で按分する必要があります。
「ガソリンは7割、保険は全額」という計上は整合が取れず、指摘されやすいです。割合を決めたら関連費用を一括して同じ割合で扱うのが基本。
経費にできないもの
- 仕事と関係のない食事代(自分のランチは原則NG)
- プライベートの服・日用品
- 交通違反の罰金
「配達中に食べたものだから」と自分の食事を経費にするのは基本的に認められません。打ち合わせの相手がいる、といった事情がなければ難しいと考えておくのが無難です。
経費ではないが控除になるもの
もうひとつ、経費と混ざりやすいのが所得控除です。仕事のために払っていても、経費ではなくこちらで引くものがあります。
- 国民年金・国民健康保険の保険料
- 労災保険の特別加入の保険料
いずれも社会保険料控除の対象です。経費の欄に入れると場所が違うので、申告書の該当欄で引きます。金額が大きくなりやすいので、取りこぼさないほうが得です。労災の特別加入そのものは「配達中にケガで走れない。その間の収入、労災「特別加入」で補える?」で扱っています。
家賃は経費にできる?
よく出る疑問のひとつ。結論から言うと、フーデリだと家賃の按分は通りにくいです。
家で仕事をする職種なら家賃の一部を経費にできますが、配達は仕事そのものが外(路上)で行われます。家を「仕事場」として使っている割合を示しにくいのが理由です。
帳簿付けや備品の保管に使うスペース分をごく一部、という考え方はありますが、根拠を説明できないなら無理に入れないほうがいいでしょう。
記録の習慣がいちばん効く
経費の知識より先に、レシートと支出を記録する習慣のほうが効きます。あとからまとめてやろうとすると、ガソリン代いくら使ったっけ、あの部品代のレシートどこ、と必ず詰まります。
給油したらレシートを撮影。修理に出したら記録する。これだけで申告時の負担がだいぶ変わります。
日々の売上と一緒に経費もメモしておくと、年間でいくら使ったかが自然と見えてきます。
白色でも経費は落とせる?
青色は翌年から準備する
確定申告の種類は「白色申告」と「青色申告」の2つがあります。白色でも経費計上はできるので、始めたばかりの年に焦る必要はありません。
青色申告は最大65万円の特別控除があり節税効果が大きいですが、事前に「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。期限はその年の3月15日まで。ただし1月16日以後に開業した場合は、開業から2ヶ月以内に申請すればその年分から青色にできます。
この控除は2027年分から最大75万円に上がり、要件も変わります。時期ごとの段取りは「配達員の確定申告、年間スケジュールでまるごと整理」にまとめています。
配達を始めてしばらく経ってから青色を検討した場合は期限を過ぎていることが多く、よく聞くのは「今年は白色で申告して、来年から青色に切り替える」という流れ。
なお、青色申告が使えるのは事業所得の人だけです。雑所得か事業所得かは副業か専業かではなく、帳簿の有無や収入規模から判断されます。
ここで誤解が起きやすいのですが、雑所得でも経費は引けます。使えないのが青色申告の特典(65万円の特別控除など)だけで、「収入 − 経費 = 所得」で計算するのはどちらも同じです。
「事業と認められないから経費はゼロ」という話を聞くことがありますが、これは正しくありません。自分がどちらに当たるかは「雑所得と事業所得、どちらで申告するか」を見てください。
青色に切り替えるなら、翌年の1〜3月に慌てないよう年内に開業届を出しておくのが無難です。会計ソフト(弥生・マネーフォワード・freee)を使えば複式簿記の記帳もそこまで難しくありません。
レシートは捨てていい?
保存期間のルール
意外と知られていませんが、経費にしたレシートや領収書は一定期間とっておく義務があります。確定申告が終わっても捨てられません。期間は申告の種類で変わります。
- 青色申告 … 帳簿も領収書も原則7年(前々年の所得が300万円以下なら領収書などは5年)
- 白色申告 … 領収書などの書類は5年
保存のしかたは、もとが「紙」か「データ」かで分かれます。ここを混同しやすいので注意が必要です。
紙のレシート(給油・部品など) は、紙のまま保管しておけば大丈夫です。箱でとっておくのが大変であれば、スマホで撮ってデジタル化する保存方法(スキャナ保存)も選べます。
データで受け取ったもの(メールやPDFの領収書、ネット購入の明細など) は、2024年から電子のまま保存することが必要になりました。紙に印刷して元データを捨てるのは原則NG——ここがうっかりしやすいポイント。
電子データは「事務処理規程」
1枚で対応できる
電子で受け取ったデータには、「あとから改ざんしていないこと」を担保するルール(真実性の確保)があります。
タイムスタンプや専用システムを使わない個人なら、現実的なのは「訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作って備えておく方法です。
大げさに聞こえますが、国税庁がそのままの名前でサンプル(ひな形)を配っています。ダウンロードして自分用に直すだけで対応できます。
検索のしやすさを求める要件もありますが、2年前の売上が5,000万円以下なら、その検索要件は不要です。
多くの配達員はここに当てはまるはずなので、まずは「データはデータのまま保存」+「規程を1枚用意」から始めれば十分です。
なお、改ざん防止や検索の要件に間に合わない事情がある場合の猶予措置もあります。ただし猶予されるのは要件のほうで、データを残しておく義務は変わりません。
「給油したら撮影」「受け取ったPDFはフォルダに残す」を習慣にしておけば、経費の記録と保存がいっぺんに片づきます。地味ですが、ここがいちばんの近道。
出典(国税庁)
- No.1130 社会保険料控除
- 記帳・帳簿等の保存について
- 電子帳簿等保存制度特設サイト
- 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月)(PDF・2026-08-24確認)
※この記事は一般的な情報の整理であり、個別の申告内容を保証するものではありません。制度は改正されることがあります。判断に迷う場合や最新の取り扱いは、国税庁の公式情報・税務署・税理士に確認してください。