← ブログ一覧
稼ぎ方11分で読めます

Uberが1割リストラ
配達員は対象外だが報酬は別

A

Dice

現役配達員が運営

Uberが1割リストラ。配達員は対象外だが、報酬の話は別
この記事の目次
  1. 1.何が減ったのか
  2. 2.誰にとっての何なのか
  3. 3.配達員は最初から対象外
  4. 4.「投資を増やす」に金額がない
  5. 5.増えてはいるが戻している途中
  6. 6.ただし日本の数字ではない
  7. 7.何を見れば分かるのか
  8. 8.まとめ
  9. 9.出典

2026年9月2日、Uberが従業員の約10%を削減すると発表しました。

結論から書くと、減ったのは社員で、配達員は最初から含まれていません

ただし報酬の話は別です。公式メッセージには「配達員への投資を増やす」とも書かれていますが、金額はまだ何も出ていない

何が減ったのか、その言葉をどこまで信じられるのか、そして何が分かっていないのかを、Uberの発表と決算資料で整理します。

何が減ったのか

削られたのは事業ではなく、組織の階層とチームの数です。CEOのメッセージには具体的な数字が並んでいます。

  • CEOから7階層以上離れた社員を20%削減
  • 小さすぎるチーム(マイクロチーム)を約50%削減
  • 完全リモートの職を全体の約1%まで縮小し、グローバルチームをニューヨークとサンフランシスコへ集約

配達に関係する組織では、レストラン・リテール・ダイレクトに分かれていた3つのDelivery Ops部門が1つに統合されました。国・地域・グローバルの各層で担当を一本化する、という説明です。

事業そのものをたたむ話ではありません。Uberの2025年通期は売上520億ドル(前年比+18%)、営業利益は55億ドルで前年のほぼ2倍。増収増益のまま組織の形だけを変えた格好です。

誰にとっての何なのか

同じ発表でも、立場によって見え方が逆になります。

会社と株主にとっては、コスト構造の話です。 増収増益のまま管理層を薄くして、浮いた分を成長と自律走行に回す。事業が傾いたから減らす、という形の削減ではありません。

職を失う人にとっては、生活の話です。 人数は発表されていませんが、2025年末時点の従業員34,000人を基に単純計算すると約3,400人になります。対象者への通知は発表時点で完了したと説明されていますが、各国の法定手続きが必要な場合は例外があるとも書かれています。

配達員にとっては、そのどちらでもありません。 今回の削減の対象ではなく、株主でもない。関係するとすれば報酬ですが、そこは発表の言葉と決算の数字を見ないと分かりません。

配達員は最初から対象外

削減の対象はUberの従業員です。 2025年末時点の従業員数は約34,000人で、配達員はこの中に入っていません。

配達員やドライバーは、Uberの決算では従業員と分けて扱われています。何百万人いても従業員数には計上されない。今回減ったのは、その34,000人の側です。(国や地域によっては、労働者性をめぐって別の判断が示されている例もあります。日本の配達パートナー向け契約では、独立した事業者であり雇用関係はないと明記されています。)

数字の桁を見ると、規模感がつかめます。

Uber(2025年通期)円換算(1ドル157円)
従業員約34,000人
売上520億ドル約8.2兆円
Gross Bookings(利用者が支払った総額)1,934億ドル約30兆円

売上8.2兆円という規模に対して、従業員は34,000人です。実際に走っているのは社員ではなく、決算上は従業員と分けて扱われる人たちなので、こうなります。

Gross Bookings の30兆円には、料理代として飲食店に渡る分や、税・手数料、貨物事業の売上まで含まれます(ドライバーが受け取るチップは含まれません)。

配達員に渡っている額そのものは公開されていません。いちばん近い項目は後述します。

そして今回の削減は、この供給側を対象にしたものではありません。稼働している配達員が増えたか減ったかは、発表からは分かりません。

「投資を増やす」に金額がない

公式メッセージには、削減で浮いた分の使い道がこう書かれています。

to invest even more in drivers, couriers and merchants; and to innovate across our core businesses and build the autonomous future

「ドライバー、配達員、加盟店へさらに投資する」。ここだけ読むと報酬にプラスに見えます。

ただ、同じ一文の後半に「自律走行の未来を築く」が並んでいます。 再投資先として挙がっているのは成長と革新であって、配達員の報酬とは書かれていません。配分は示されていない。

そして金額もまだ出ていません。米国には、大きな費用が生じる人員削減を臨時報告書で開示する仕組みがありますが、9月4日時点では提出されていません。提出期限は原則4営業日以内なので、まだ出ていないこと自体に意味はありません

削減にいくらかかり、いくら浮き、どこへ回すのか。現時点では公になっていないというだけです。

増えてはいるが戻している途中

では過去はどうだったのか。決算には、配達員への支払いを含む費用の項目が載っています。ただしその項目は配達員だけのものではありません

Delivery(Uber Eats)部門には「プラットフォーム参加者への直接取引コスト」という項目があります(原文は Platform Participant direct transaction costs)。主に2つで構成されていて、稼ぐ側への直接の支払いと、利用者向けのクーポンなど販促費です。

ここで注意が要ります。この項目は、配達員への報酬を取り出した数字ではありません。年次報告書は「稼ぐ側」をドライバー、配達員、加盟店、運送事業者と定義しています。つまり飲食店への支払いも同じ箱に入っていて、そこにさらに利用者向けの販促費が合算されています。

配達員の報酬だけの数字は公開されていません。 以下は「公開されている中でいちばん近い項目」であって、これで報酬の増減を判定はできない、という前提で見てください。

期間部門の収益参加者への直接取引コスト収益に占める比率
2022年109.0億ドル47.9億ドル43.9%
2023年122.0億ドル53.3億ドル43.7%
2024年137.5億ドル55.9億ドル40.7%
2025年172.5億ドル71.0億ドル41.1%
2026年上期103.1億ドル43.2億ドル41.9%

2024年に3ポイント落ちて、そこから2025年・2026年上期と2期続けて上向いています。 直近だけ見れば比率は上向きですが、2022〜2023年の43%台にはまだ届いていません。

規模で見ても同じです。2022年から2025年で部門の収益は1.58倍になりましたが、この項目は1.48倍。伸びてはいるものの、収益の伸びには追いついていません。

上期同士でそろえて比べると、2025年上期が40.0%、2026年上期が41.9%。直近の向きは上向きです。

範囲の広い項目ではありますが、少なくともこの費用全体としては、一度下げた水準を戻している途中であって、元に戻ったわけではありません。

なお5期しか並べていないのは、この区分の開示が2022年分までしか遡れないためです。この項目は2024年12月期の年次報告書から登場したもので、それ以前の報告書には存在しません。

ただし日本の数字ではない

ここで線を引く必要があります。上の数字はグローバルの合算です。

  • 国別・地域別の内訳は開示されていません
  • 日本の配達員にいくら払われたかは、この数字からは一切読めない
  • 今回の発表にも、日本への言及はありません

グローバルで比率が上がっていても、成長している市場に配分が寄っていれば、成熟した市場は据え置き、ということは普通に起こります。日本で単価が上がった実感がないことと、この数字は矛盾しません。

「配達員への投資を増やす」を日本の報酬の話として読むのは、いまの開示だと無理があります。

何を見れば分かるのか

現時点で言えるのは「まだ分からない」までです。ただ、どこを見れば分かるようになるかは決まっています。

ひとつは、金額と方法が示されるかどうか。 削減にかかる費用が臨時報告書で開示されるか、次の四半期決算で経営陣が配達員への配分について具体的に触れるか。「投資を増やす」に数字が付いた時点で、初めて中身の話ができます。

もうひとつは、自分の記録です。 決算で公開されている費用の項目は範囲が広く、しかもグローバルの合算です。日本の配達報酬が動いたかどうかは、そこからは読み取れません。単価が変わったかは、自分が受けた案件の記録を並べたほうが早いというのが正直なところです。

グローバルの発表と、手元の単価。この2つは別々に見るしかありません。

まとめ

  • 削減の対象はUberの従業員(2025年末時点で約34,000人)。配達員は決算上そこに含まれていない
  • 削ったのは事業ではなく階層とチーム構成。増収増益のまま組織の形を変えた
  • 公式メッセージの「配達員への投資を増やす」には、金額も方法も示されていない
  • 決算で公開されている費用の項目は、配達員への報酬を取り出した数字ではない。ドライバー・加盟店・運送事業者への支払いと、利用者向けの販促費まで含む
  • したがって日本の配達報酬への影響は、現時点では判断できない

分からないことを分からないまま置いておくのが、いまは正しいと思います。金額が出るか、自分の単価が動くか。そのどちらかが起きるまでは、材料が足りません。


出典

  • Uber「A simpler, faster Uber」(2026年9月2日・2026年9月4日確認)(約10%の人員削減、7階層以上を20%削減、マイクロチームの約50%削減、リモート職を約1%へ、Delivery Ops 3部門の統合、再投資先の記述)
  • Uber Technologies, Inc.「Form 10-K(2025年12月期)」(従業員約34,000人、通期売上520.17億ドル、Gross Bookings 1,934.54億ドル、営業利益55.65億ドル、Delivery部門の2023〜2025年)
  • Uber Technologies, Inc.「Form 10-K(2024年12月期)」(Delivery部門の2022〜2024年。「Platform Participant direct transaction costs」の区分はこの報告書から登場し、それ以前の年次報告書には存在しない)
  • Uber Technologies, Inc.「Form 10-Q(2026年6月期)」(Delivery部門の収益・参加者への直接取引コスト・部門営業利益。四半期および半期)
  • Uber「Uber Technology Services Agreement(Delivery Partners)」(2026年9月4日確認)(日本の配達パートナーは独立した事業者であり、Eats JPおよびUberグループとの間に雇用関係がないこと)
  • 米国証券取引委員会 EDGAR「Uber Technologies, Inc. の提出書類一覧」(2026年9月4日時点で、今回の人員削減に関する8-Kの提出がないこと)
  • 為替や各社の数字は開示時点のものです。決算の区分や表示方法は変更されることがあるため、最新の開示をご確認ください。

※本記事は公開情報の整理であり、投資判断や個別の報酬を保証するものではありません。

売上と単価をまとめて記録

スクショを撮るだけで売上・時給・稼働時間を自動集計。配達員向けアプリ Aide は無料で始められます。

無料で使ってみる