配達中のイヤホン
片耳ならセーフ?
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現役配達員が運営

片耳にイヤホンを入れて、アプリの通知音や道案内を聞きながら走る配達員は多いと思います。気になるのは、それが違反になるかどうかです。
結論から書くと、片耳か両耳か、骨伝導かでは決まりません。基準は「安全な運転に必要な音や声が聞こえるか」で、警察は見た目だけで決めず、声をかけたときの反応などから個別に判断します。
ただ、その基準を書いた条文は都道府県ごとに違います。自転車にしか適用しない県もあれば、「両耳」を例に挙げる県もあります。
47都道府県のうち43件を、規則の原文か県警の資料で確認しました。その結果と、配達中にどう考えればいいかを整理します。
片耳なら大丈夫なのか
片耳だから大丈夫、とも、片耳でも違反、とも言い切れません。判断の軸が別のところにあるからです。
警察庁は2023年、イヤホンを使う自転車の取締りについて全国の警察に通達を出しています。そこでは使用形態ではなく、聞こえているかどうかで判断するよう指示しています。
イヤホン等を使用した自転車利用者に対する指導取締りに当たっては、イヤホン等の使用という外形的事実のみに着目して画一的に違反の成否を判断するのではなく、例えば、警察官が声掛けをした際の運転者の反応を確認したり、運転者にイヤホン等の提示を求め、その形状や音量等から、これを使用して自転車を運転する場合に周囲の音又は声が聞こえない状態となるかどうかを確認したりすることにより、個別具体の事実関係に即して違反の成否を判断すること。
同じ通達は、片耳だけの場合や、両耳でもごく小さな音量の場合は、周りの音が聞こえている可能性があるとしています。オープンイヤー型や骨伝導型も、性能や音量によっては聞こえうる、という書き方です。
裏を返すと、片耳でも音量が大きく、呼びかけに気づかなければ違反と判断されえます。
片耳かどうかより、周りの音が聞こえているかが問われます。
ルールは県ごとに決まる
道路交通法には、イヤホンを名指しした条文がありません。71条6号が「公安委員会が必要と認めて定めた事項」を守るよう定め、中身を各都道府県の公安委員会規則に任せています。
その規則の多くに、イヤホン等を使って安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態で運転しない、という号があります。音量の数値(デシベルなど)を決めた県は1つもありません。
では、取締る側の主観で決まるのか。ある程度はそうです。数値がない以上、その場で聞こえ方を確かめるしかありません。
その分、判断の幅を絞る公式文書もあります。岩手県警の解釈通達は、形状や片耳・両耳を問わず「音量等から周囲の音や声が聞こえない状態となるかどうかについて個別に判断しなければならない」としています。処罰するのは故意の場合だけ、とも明記しています。
取締りそのものの考え方は、これとは別の話です。警察庁の説明では、自転車の違反は基本的にその場での指導警告で、検挙の対象になるのは悪質・危険な違反です。その例として、警察官の指導警告に従わない場合が挙がっています。
高知県警も、危険性が高い違反や、警察官の指示に従わずに違反した人を積極的に取り締まる方針を公表していて、同じ考え方です。
47都道府県を並べてみた
各都道府県の規則を例規集などで確かめると、書き方にかなり差がありました。規則の原文で確認できたのが36、県警の公式ページや広報物で確認できたのが7です。静岡・奈良・島根・大分の4県は、原文にたどり着けず未確認です。
自転車にしか適用しない県がある
青森・岩手・秋田・山形の4県は、イヤホン等の規定の対象を自転車に限っています。対象を確認できたほかの県の多くは「車両」「車両等」と書いていて、車もバイクも自転車も対象です。
バイクや原付で走る配達員にとっては、ここが一番大きな差です。ただし「4県ならバイクは自由」ではありません。次の節で扱います。
「両耳」と書く県がある
秋田は「イヤホンを使用して両耳をふさぐ等周囲の音が十分に聞こえないような状態」、新潟は「イヤホン若しくはヘッドホンを使用して両耳を塞ぎ」と書いています。
これは例示で、片耳なら適法と定めたものではありません。とはいえ、条文を読んだ人が「片耳ならいい」と受け取りやすい書き方ではあります。
求める聞こえ方の水準が違う
大半の県は「聞こえないような状態」ですが、秋田は「十分に聞こえないような状態」、岡山は「聞くことが困難な状態」と書いています。
完全に聞こえない、まで行かなくても当てはまりうる書き方です。ただ、文言に差はあっても、実際の取締りで判断に差が出ているかは確認できていません。
警察官の指示と書く県がある
三重・大阪・和歌山・広島は、聞こえるべき音として警音器や緊急自動車のサイレンと並べて「警察官の指示」を挙げています。
通達の「声をかけたときの反応を見る」と、そのまま対応する書き方です。
イヤホンの語がない県もある
佐賀は「ラジオ等を聞きながら」、山口は「カーステレオ等を聞きながら」で、条文にイヤホンという語が出てきません。「等」で読めるので対象外にはなりませんが、書かれた時代の古さが見えます。
東京・群馬・岐阜・愛媛は、今も「イヤホーン等を使用してラジオを聞く等」のままです。規則の書かれた時代が、一番よく出ているところかもしれません。
47都道府県の一覧を見る(タップで開く)
「対象」は規定が及ぶ車両です。「確認」は、原文=規則の原文、県警=県警の公式ページ・広報物、未確認=原文にたどり着けなかった県。
| 都道府県 | 対象 | 文言の特徴 | 確認 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 車両 | 音楽を聴くなど | 原文 |
| 青森 | 自転車 | ヘッドホン等・大きな音量 | 原文 |
| 岩手 | 自転車 | ヘッドホン等 | 原文 |
| 宮城 | 車両 | 音楽を聞くなど | 原文 |
| 秋田 | 自転車 | 両耳をふさぐ等・十分に聞こえない | 原文 |
| 山形 | 自転車 | 音楽等を聞くなど | 原文 |
| 福島 | 車両等 | 聞くことができない状態 | 原文 |
| 茨城 | 自動車・原付・自転車 | 音楽等を聴くなど | 原文 |
| 栃木 | 車両 | 音楽を聴く等 | 原文 |
| 群馬 | 車両 | ラジオを聞くなど | 原文 |
| 埼玉 | 車両 | ラジオ等を聴くなど | 原文 |
| 千葉 | 車両 | 音量を上げ音楽等を聴くなど | 県警 |
| 東京 | 車両等 | ラジオを聞く等 | 原文 |
| 神奈川 | 自動車等(自転車含む) | 大音量やイヤホンで音楽を聴くなど | 県警 |
| 新潟 | 車両等 | 両耳を塞ぎ | 原文 |
| 富山 | 車両 | 音楽等を聞き | 原文 |
| 石川 | 車両等 | 音楽等を聴き | 原文 |
| 福井 | 車両等 | 音楽を聞く等 | 原文 |
| 山梨 | 車両 | 外部の音声が聞こえない | 原文 |
| 長野 | 車両 | 交通に関する音声が聞こえない | 原文 |
| 岐阜 | 車両 | ラジオを聞く等 | 原文 |
| 静岡 | - | - | 未確認 |
| 愛知 | 車両等 | 音楽等を聞くなど | 原文 |
| 三重 | 車両 | 警察官の指示を明記 | 原文 |
| 滋賀 | 車両 | イヤホーン等を使用して聞く等 | 原文 |
| 京都 | 車両等 | 聞くことができない状態 | 原文 |
| 大阪 | 車両 | 警察官の指示を明記 | 原文 |
| 兵庫 | 自転車(県警ページの記述) | 大音量で音楽を聴くなど | 県警 |
| 奈良 | - | - | 未確認 |
| 和歌山 | 車両 | 警察官の指示を明記 | 原文 |
| 鳥取 | 車両 | カーステレオ等をイヤホーンで聞く等 | 原文 |
| 島根 | - | - | 未確認 |
| 岡山 | 車両等 | 聞くことが困難な状態 | 原文 |
| 広島 | 車両 | 警察官の指示を明記 | 県警 |
| 山口 | 車両 | イヤホンの語なし | 原文 |
| 徳島 | 車両 | 音楽、音声その他の音響 | 原文 |
| 香川 | 車両等 | ヘッドホン等 | 原文 |
| 愛媛 | 車両等 | ラジオを聞く等 | 原文 |
| 高知 | 自転車(県警チラシの記述) | 交通の音等が聞こえない | 県警 |
| 福岡 | 自転車(県警ページの記述) | 警察官の指示を例示 | 県警 |
| 佐賀 | 車両 | イヤホンの語なし | 原文 |
| 長崎 | 車両等 | 音楽を聞く等 | 県警 |
| 熊本 | 車両等 | カーラジオを聞く等 | 原文 |
| 大分 | - | - | 未確認 |
| 宮崎 | 車両 | ラジオ等を聞くなど | 原文 |
| 鹿児島 | 車両等 | ヘッドホン、イヤホン等 | 原文 |
| 沖縄 | 車両 | 音楽等を聞くなど | 原文 |
兵庫・高知・福岡は、県警の案内が自転車向けに書かれているだけで、規則の対象が自転車に限られるかは確認できていません。調査日は2026年9月26日です。
バイクと原付の場合
対象を確認できた県の多くでは、イヤホンの規定は車両全般に及びます。バイクや原付も、「安全な運転に必要な音や声が聞こえない状態」かどうかが問われる点は自転車と同じです。
ただ、声かけへの反応や音量で確かめるといった手順は、自転車の取締りについての通達に書かれたものです。バイクや原付も同じ手順で判断されるとまでは言えません。
問題は、対象が自転車だけの4県です。青森・岩手・山形の規則には、車やバイクの「音」に関する遵守事項がありません。秋田だけは別の号で「カーラジオ等を高音にして、安全運転に支障のある状態で車両を運転しないこと」と定めています。
それでも「4県ならバイクのイヤホンは問題ない」とは言えません。どの県でも、道路交通法70条の安全運転義務がかかるからです。
安全運転義務は、装置を確実に操作し、他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転する、という一般的な義務です。イヤホンをしているだけで違反になるものではありませんが、聞こえないせいで危ない運転になれば問われます。
事故になれば、反則金では済まない話になります。事故直後の動き方は事故にあったときの最初の動きにまとめています。
イヤホンを名指しした規定がない県でも、聞こえないまま走って危なければ別の違反になります。
違反したときの重さ
イヤホンの規定に違反すると「公安委員会遵守事項違反」になります。違反点数はつきません。
| 区分 | 反則金 | 点数 |
|---|---|---|
| 公安委員会遵守事項違反(二輪) | 6,000円 | 0点 |
| 公安委員会遵守事項違反(原付) | 5,000円 | 0点 |
| 公安委員会遵守事項違反(自転車) | 5,000円 | - |
| 安全運転義務違反(二輪) | 7,000円 | 2点 |
| 安全運転義務違反(原付) | 6,000円 | 2点 |
自転車は2026年4月から反則金(青切符)の対象になりました。反則金を払わなければ刑事手続きに進み、イヤホンの規定の違反は5万円以下の罰金です。
ただし自転車の場合、イヤホンをしているだけで直ちに違反になるわけではない、と警察庁は説明しています。聞こえない状態の違反だけでは取締りを受けず、交通の危険が生じたときに取締りの可能性がある、という整理です。違反があってもまずは指導警告が基本で、警告に従わずに続ければ検挙の対象になりえます。
なお、スマホを手に持って通話したり画面を注視したりするのは、イヤホンとは別の違反です。自転車でも反則金は12,000円で、こちらのほうが重く扱われています。
反則金は配達の経費にはなりません。1回で配達数件分の売上が消える計算です。
配達中の現実的な使い方
ここまでを踏まえると、配達中にイヤホンを使うなら次の形が現実的です。
- 片耳にして、反対の耳は空けておく
- 通知音と道案内が聞こえる最小の音量にする
- 音楽や動画の音声を流すなら、呼びかけに気づける音量まで下げる
- 呼び止められたら、まずイヤホンを外して応じる
通知音を聞き逃したくない気持ちはよく分かります。ただ、そのせいで警察官の呼びかけやクラクションに気づけないのは本末転倒です。
まとめ
配達中のイヤホンは、片耳か両耳か、骨伝導かでは決まりません。警察は声かけへの反応などから「周りの音が聞こえているか」を個別に判断します。
ただ、条文の書き方は県ごとに違い、自転車だけが対象の県や、求める聞こえ方の水準が高い県もあります。自分が走る県の書き方は、一覧で一度確かめておくと安心です。
※この記事は2026年9月26日時点の規則をもとにした一般的な情報の整理です。規則は改正されることがあり、個別の判断は各都道府県警察の案内を確認してください。
出典
- 警察庁「イヤホン又はヘッドホンを使用した自転車利用者に対する交通指導取締り上の留意事項等について(通達)」令和5年7月25日(片耳・骨伝導の扱い、声掛けによる確認)
- e-Gov「道路交通法」第70条・第71条第6号・第120条(安全運転義務、公安委員会遵守事項、罰金)
- e-Gov「道路交通法施行令」別表第二・別表第六(違反点数、反則金の区分)
- 警察庁「自転車をはじめとする軽車両の反則行為と反則金の額」(自転車の反則金)
- 警察庁 自転車ポータルサイト「取締りについて」「よくある質問」(指導警告と検挙の考え方、イヤホン使用の扱い)
- 警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」(二輪・原付の反則金)
- 岩手県警察「岩手県道路交通法施行細則の解釈・運用について」(ヘッドホン等の解釈、故意犯)
- 高知県警察「自転車の交通ルール」令和7年(取締りの方針)
各都道府県の規則(タップで開く)
- 北海道「道路交通法施行細則」第12条第6号
- 青森県「青森県道路交通規則」第16条第4号
- 岩手県「岩手県道路交通法施行細則」第14条第3号
- 宮城県「宮城県道路交通規則」第14条第11号
- 秋田県「秋田県道路交通法施行細則」第11条第4号・第6号
- 山形県「山形県道路交通規則」第15条第6号
- 福島県「福島県道路交通規則」第11条第6号
- 茨城県「茨城県道路交通法施行細則」第13条第15号
- 栃木県「栃木県道路交通法施行細則」第13条第9号
- 群馬県「群馬県道路交通法施行細則」第25条第3号
- 埼玉県「埼玉県道路交通法施行細則」第10条第6号
- 千葉県警察「千葉県道路交通法施行細則の一部改正」
- 東京都「東京都道路交通規則」第8条第5号
- 神奈川県警察「セーフティーメッシュかながわ通信 平成23年第10号」
- 新潟県「新潟県道路交通法施行細則」第12条第7号
- 富山県「富山県道路交通法施行細則」第17条第8号
- 石川県「石川県道路交通法施行細則」第12条第11号
- 福井県「福井県道路交通法施行細則」第16条第7号
- 山梨県「山梨県道路交通法施行細則」第10条第6号
- 長野県「長野県道路交通法施行細則」第14条第6号
- 岐阜県「岐阜県道路交通法施行規則」第12条第7号
- 愛知県「愛知県道路交通法施行細則」第7条第4号
- 三重県「三重県道路交通法施行細則」第16条第13号
- 滋賀県「滋賀県道路交通法施行細則」第14条第5号
- 京都府「京都府道路交通規則」第12条第12号
- 大阪府「大阪府道路交通規則」第13条第4号
- 兵庫県警察「自転車に係る主な交通ルール等」
- 和歌山県「和歌山県道路交通法施行細則」第12条第5号
- 鳥取県「鳥取県道路交通法施行細則」第9条の22第2号
- 岡山県「岡山県道路交通法施行細則」第10条第7号
- 広島県警察「自転車交通ルール|改正について」
- 山口県「山口県道路交通規則」第11条第6号
- 徳島県「徳島県道路交通法施行細則」第14条第6号
- 香川県「道路交通法施行細則」第20条第6号
- 愛媛県「愛媛県道路交通規則」第12条第6号
- 高知県警察「自転車の交通ルール」
- 福岡県警察「自転車の学校 基本的な交通ルール」
- 佐賀県「佐賀県道路交通法施行細則」第11条第7号
- 長崎県警察「長崎県道路交通法施行細則の一部改正」
- 熊本県「熊本県道路交通規則」第11条第5号
- 宮崎県「宮崎県道路交通法施行細則」第12条第11号
- 鹿児島県「鹿児島県道路交通法施行細則」第12条第9号
- 沖縄県「沖縄県道路交通法施行細則」第12条第13号