← ブログ一覧
制度・ルール6分で読めます

新基準原付はなぜ30キロ制限のまま?

A

Dice

現役配達員が運営

この記事の目次
  1. 1.そもそも新基準原付とは
  2. 2.検討会が確かめたのは「性能」
  3. 3.検討されなかったのは「30km/hというルール」
  4. 4.ズレの正体は「土俵が違う」
  5. 5.では30キロ制限は危ないのか
  6. 6.知っておくと車両選びが変わる
  7. 7.出典

2025年4月から「新基準原付」という区分が加わりました。総排気量125cc以下・最高出力4.0kW以下に制御した二輪車を、原付免許のまま乗れるようにしたものです。

車体は125ccクラスで大きいのに、法定速度は30km/hのまま、二段階右折も従来の原付一種と同じ——ここに素朴な引っかかりを感じた人は少なくないと思います。

大きな車体で流れの速い幹線道路に出ても、30km/h制限と二段階右折は据え置き。「車体は立派になったのに、縛りは50ccのまま」というこのちぐはぐさは、どこから来ているのか。

警察庁の検討会の報告書を読むと、その理由——というより、そもそも何が検討されて何が検討されなかったのかが見えてきます。

そもそも新基準原付とは

先に区分を整理しておきます。2025年4月以降、原付は実質3種類になりました。

従来の原付一種(〜50cc)新基準原付(出力制御125cc)原付二種(フルパワー125cc)
必要な免許原付・普通免許原付・普通免許小型限定普通二輪以上
法定速度30km/h30km/h60km/h
二段階右折必要必要不要
二人乗り不可不可可(免許取得1年〜)
ナンバーピンク

新基準原付は「総排気量50cc超125cc以下の原動機の最高出力を、総排気量50cc相当(4.0kW)に制御した二輪車」です。

背景にあるのは排出ガス規制です。2025年11月以降に製作される50ccには新しい排ガス規制(国内第4次排ガス規制)が適用され、これを満たす50ccの開発・生産が難しくなりました。

そこで「125ccのエンジンを使いつつ、出力を50cc相当に絞る」ことで、従来の原付一種の枠を維持しようとしたのが新基準原付です。

車体は大きいのに扱いは原付一種のまま。この「大きい車体を原付免許で」という点は車両選びでは利点にもなります(詳しくは「配達バイクの選び方:「二種は速いから」で選ぶと外す」で触れています)。

ただ同時に、冒頭の「なぜ縛りは据え置きなのか」という違和感の出どころでもあります。

検討会が確かめたのは「性能」だった

この制度改正のもとになったのが、警察庁の「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書(令和5年12月)です。ここに、違和感の答えの半分が書かれています。

検討会が確かめたのは、ひとことで言えば「新基準原付が、従来の原付一種と同じくらい安全に・簡単に運転できるかどうか」です。技能試験官による走行評価や、一般の運転者を対象にした試乗会を行い、加速や取り回し、転倒の有無などをチェックしました。

結果は「現行原付とおおむね同等」。加速が適度に抑えられていて、原付免許の技能があれば同じように扱える、という評価でした。

つまり検討されたのは、車両そのものの性能が原付一種の枠に収まるかという点です。

「125ccのエンジンだけど、出力を絞れば実質50cc相当に扱っていいよね」という確認作業だった、と言い換えられます。

検討されなかったのは「30km/hというルール」

ここで注目したいのが、報告書の総括にある一文です。この結論は、

現行原付に課せられた道路交通法及びその他関連法規に基づいて運転されることを念頭に安全性等について議論された結果である

とわざわざ念押しされています。噛み砕くと、「30km/hや二段階右折といった既存のルールは前提として固定したうえで、その枠内で新基準原付が安全かを見た」ということです。

裏を返せば、30km/hという数字そのものが今の交通環境に合っているのか、二段階右折が本当に安全側に働いているのか——といったルールの中身の妥当性は、この検討会の対象ではなかったわけです。

議題は「新しいエンジンを既存の器に入れていいか」であって、「その器の形は正しいか」ではありませんでした。

ズレの正体は「土俵が違う」こと

ここまで来ると、冒頭の違和感の正体が見えてきます。制度をつくる側と、実際に走る側とで、そもそも見ている問いが違うのです。

  • 検討会の問い:新しいエンジンは、旧来のルールの枠に収まるか(=車両性能の話)
  • 現場の問い:30km/hという数字は、今の交通量・車の流れに合っているか(=ルールの話)

要は、問いが噛み合っていないのです。検討会が見たのは「エンジンが器に収まるか」、現場が気にするのは「器の形は今に合っているか」。

別々の問いなので、片方に答えても、もう片方の違和感はそのまま残ります。

では30キロ制限は危ないのか

なお、原付の30km/h制限については「絶対的な速度の低さより、周囲の車との速度差のほうが体感的に危ない場面がある」という指摘も聞かれます。幹線道路で流れに乗れず、後続車との差が大きくなる、という状況です。

ただ、この点について現時点で確たる公式の検証があるわけではなく、ここで断定するのは避けます。あくまで「そう感じる場面もある」という現場の実感の域を出ません。

制度の議論としては、まだ正面から扱われていない論点、という位置づけで捉えておくのが正確だと思います。

知っておくと車両選びが変わる

ルールは当面変わらない前提で動くのが現実的です。そのうえで、この構造を知っておくと車両選びの見え方が少し変わります。

新基準原付は「大きい車体を原付免許で」という手軽さが魅力ですが、速度・右折の縛りは50ccのまま残ります。

幹線道路をまたぐ機会が多いエリアや、1件あたりの移動が長いエリアで機動力を求めるなら、その縛りが外れる原付二種のほうが噛み合う場面もあります。逆に短距離高密度のエリアなら、縛りの差はそれほど時給に響きません。

このあたりの「速さはエリア次第、効くのは積載」という車両選びの軸は「配達バイクの選び方」に整理しています。

制度の背景を知ったうえで読み直すと、なぜ「速さ」を過大評価しないほうがいいのかが、より腑に落ちるはずです。


出典

※本記事は一般的な情報の整理です。交通ルールの適用は状況により異なります。交通ルールは必ず順守してください。

収支・稼働をまとめて記録

スクショを撮るだけで売上・時給・稼働時間を自動集計。配達員向けアプリ Aide は無料で始められます。

無料で使ってみる