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配達で使うと保険に入れない?
断られる会社と、入れる入口

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現役配達員が運営

配達で使うと保険に入れない?断られる会社と、入れる入口
この記事の目次
  1. 1.自賠責が見てくれる範囲
  2. 2.申し込む前に断られる
  3. 3.ファミリーバイク特約の扱い
  4. 4.相談先は事業者向けの商品
  5. 5.証券の使用目的がずれていないか
  6. 6.補償は案件に紐づいている
  7. 7.3社の補償を並べる
  8. 8.過失0では示談を任せられない
  9. 9.弁護士特約が埋める空白
  10. 10.自分のケガは誰が見るか
  11. 11.まとめ
  12. 12.出典

「保険には入っているから大丈夫」。この感覚が、配達中だけ前提から崩れることがあります。

理由は単純で、フードデリバリーは報酬をもらって荷物を運ぶ行為だからです。自家用車やバイクを想定した保険商品にとって、これは想定外の使い方になります。

しかも厄介なことに、用途を伝えずに契約できてしまうと、問題は事故の後まで表面化しません。加入したときは何も言われず、請求の段になって初めて範囲の話になります。

先に結論を書くと、配達に使っていることをそのまま伝えて、引き受けてもらえる商品かを確認するのが先です。補償の中身を比べるのはその後になります。順番に整理します。

自賠責が見てくれる範囲

まず土台の確認から。自賠責保険は、原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務づけられています。電動キックボードやモペットも対象です。

ここで押さえておきたいのは、自賠責の守備範囲がかなり狭いことです。国土交通省は、自賠責の対象が人身事故による対人損害賠償のみであり、物損事故は補償の対象にならないと明記しています。

つまり相手の車やガードレールを壊しても、自賠責からは1円も出ません。自分のケガも対象外です。

支払限度額も、被害者1名につき次のとおりです。

損害限度額
傷害120万円
死亡3,000万円
後遺障害(常時介護を要する第1級)4,000万円
その他の後遺障害第1級3,000万円〜第14級75万円

傷害120万円は、入院が続けばすぐ届く水準です。自賠責は被害者救済のための最低限の仕組みで、そこから先を埋めるのが任意保険、という関係になります。

なお自賠責をつけずに走ると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に加えて、違反点数6点で免許停止処分です。

申し込む前に断られる

では任意保険に入ろう、となったところで最初の壁が来ます。使用目的を「業務」にすれば入れる、という話ではありませんでした。

今回確認できた範囲では、通販型(ダイレクト型)の2社が配達用途をそもそも引き受けていませんでした。チューリッヒはバイク保険のよくある質問で、こう明記しています。

宅配便業者の配達やフードデリバリーの業務委託など有償で貨物を運送する車両、有償で人を運送する車両、または事業用登録の車両のお引き受けはできません。

アクサダイレクトも同じ立場です。有償で荷物などを運ぶことに使用している車は見積りも申込みもできない、としています。ただし道路運送法にもとづく有償運送許可を受けた自家用自動車は除く、という但し書きが付いています。

見積り画面まで進めるので気づきにくいのですが、用途を正確に伝えると門前払いになるのがこの層です。逆に言えば、用途を伝えずに契約してしまうリスクがここに潜んでいます。

そして実際には、もう一つのほうが多いかもしれません。配達を始める前から持っていた保険を、そのまま使っているケースです。

バイクや車は配達より先に持っていた人がほとんどです。通勤や日常・レジャーで契約して、後から配達を始めた。契約したときは用途を偽っていないので、後ろめたさもありません。「保険には入っている」と思ったまま走ることになります。

ただし使用目的は告知事項なので、途中で変われば手続きが要ります。チューリッヒも、保険期間中に使用目的が変わる場合は契約内容の変更手続きが必要としています。

契約のときに確認される機会がないぶん、気づくきっかけもありません。配達を始めた日に保険証券を見直した人は、そう多くないはずです。ここが一番静かなリスクだと思います。

ファミリーバイク特約の扱い

原付を持っている人が次に思いつくのがファミリーバイク特約です。自動車保険に付ける形で、125cc以下のバイクをカバーする特約ですね。

チューリッヒは、仕事用途での運転は補償対象外とし、配達などの業務目的での使用も対象外だと明記しています。少なくともこの会社では、配達に使う原付をこの特約で賄うことはできません。

ただし、これを他社にそのまま当てはめられるかは別です。特約の条件も「業務使用」の線引きも各社の約款で決まるので、自分が契約している会社の約款で確かめるしかないのが実際のところです。

約款に配達での使用が書かれていなければ、代理店か保険会社に直接聞く。ここは検索結果で判断すると外しやすい部分です。

そしてもう一本、確認しておきたい軸があります。その原付で走っているときに、弁護士特約が使えるかです。業務使用に対応しているかと弁護士特約が及ぶかを両方聞いたほうがいい、という助言も出ています。

ファミリーバイク特約は自動車保険に付ける形なので、契約車以外の原付に乗っているときに本体の特約がどこまで及ぶかは、会社と特約の型で変わります。業務使用の可否だけ確認して安心すると、後で出てくる「過失0では示談を任せられない」場面で手札がない、ということが起きます。

相談先は事業者向けの商品

では配達員はどこを当たるのか。手がかりは商品ラインの側にありました。

東京海上日動は、TAP(一般自動車保険)について、契約する車が主な自家用車の場合でも、事業にのみ使用する車のときはTAPで契約すると案内しています。この商品は法人向けのページに置かれていて、想定している顧客が個人向けの通販商品とは違います。

ここから読み取れるのは商品の区分までで、フードデリバリーの車両を必ず引き受ける、と書かれているわけではありません。それでも事業に使う車両なら、個人向けの通販型ではなく事業者向けの商品が相談先の候補になる、という見当はつきます。

そして事業者向けの商品は、代理店を通して契約する形が基本です。バイク用品店が代理店を兼ねていることもあり、用途を伝えたうえで引き受けてもらえるか相談する流れになります。通販型が申込みの段階で断るのに対して、こちらは個別に引受を判断する余地がある、という構造の違いです。

なお代理店の約76%は1社としか契約していない専属代理店です(日本損害保険協会・2024年3月時点)。1軒で断られても、それが業界の総意とは限りません。複数社を扱う乗合代理店なら横断して聞けます。

「配達員は任意保険に入れない」という話を見かけることがあります。

入れないのではなく、入口の場所が違うということだと思います。

証券の使用目的がずれていないか

契約できたら終わり、ではありません。もう一段あります。

使用目的は告知事項です。東京海上日動は「事実と異なる場合や事実を記載しない場合には、ご契約を解除することがあります」「解除する場合、保険金をお支払いできないことがあります」としています。

区分は3つあり、年間を通じて平均で月15日以上使うかどうかで分かれます。

区分条件
日常・レジャー下2つ以外
通勤・通学月15日以上、通勤・通学に使う
業務使用月15日以上、業務に使う

専業で走っているなら、月15日はまず超えます。副業でも週4回出ていれば届く水準です。区分が上がると保険料も上がりますが、差額は各社とも公開していません。

ずれ方は2通りあって、起きることが違います。

ずれ方起きること
実態より低い(月15日以上走っているのに日常・レジャーのまま)解除・不払いの可能性
実態より高い(月に数日なのに業務使用)保険料を多く払うだけ

危ないのは1つ目です。配達を始める前から持っていた保険をそのまま使っていると、この状態になります。契約時に嘘をついていないぶん、気づくきっかけがありません。

2つ目は、保険料を多く払うだけで補償が消える話ではありません。東京海上日動は、使用目的が正しく設定されていればその目的以外で運転しているときも補償の対象になるとしています。使用目的は保険料を計算するための条件であって、事故ごとに補償を切る条件ではありません。

そして、区分とはまったく別の関門があります。

ここまでの区分の話は「保険料をいくらにするか」であって、契約できることが前提になっています。ところが前の節で見たとおり、通販型は有償で貨物を運送する車両を引き受けません。配達に使うと伝えた時点で、区分を選ぶ画面まで進めないということです。

何を決めるか答え方
1. 引受の可否そもそも契約できるか配達に使う/使わない
2. 使用目的の区分保険料をいくらにするかどれくらいの頻度か

1を通らないと2に進みません。しかも1には日数の条件がありません。月に1日しか走らなくても、有償で運んでいれば同じです。

だから「業務使用にしておけば大丈夫」にはなりません。区分をどう選んでも、1の答えは変わらないためです。用途と日数をそのまま伝えて、引受の可否と申告すべき区分を両方確認する。ここは自己判断で埋めない部分です。

証券の「使用目的」欄が日常・レジャーや通勤・通学のままになっていないか。一度見ておく価値があります。地味な確認ですが、事故の後に効いてくるのはこういう部分です。

補償は案件に紐づいている

もう一つがプラットフォームの補償です。補償があること自体、あまり知られていません

知らないまま走っているなら押さえておきたいところですが、範囲には条件が付きます。これは稼働時間に対して付くものではなく、案件に対して付くものです。

Uberは配達パートナーガイドで、傷害補償の対象期間を、配達リクエストを受けた時点から配達が完了またはキャンセルするまでの間、および配達を終えてから15分以内と定めています。対人・対物賠償責任のほうは「配達中」のみで、15分の延長はありません。

つまりUberの場合、鳴り待ちの時間、エリア間の移動、そして帰宅の道中は補償の外側です。1日8時間オンラインにしていても、補償が点いているのは案件を持っている間だけで、実際にはかなり細切れになります。

出前館は「配達中」の定義そのものを公開していません。降車後の事故であっても配達中であれば適用可能としているので、バイクを降りてお届け先へ向かう区間は含まれるようです。ただし、どこからどこまでが「配達中」かは公開情報からは読み取れませんでした。

3社の補償を並べる

公開されている情報で比べると、3社の姿勢はかなり違いました。

任意保険プラットフォームの補償
出前館バイク・自動車は加入必須対人・対物は上限1億円。バイクや車は自分の任意保険で賄いきれなかった場合に適用、自転車は出前館の保険を優先適用
Uber契約上、維持することに同意する形配達中+完了後15分以内(対人・対物は配達中のみ)
ロケットナウ約款に加入必須の定めなし。125cc超・軽自動車は事業用登録が必要約款で交通事故は自己責任と明記

配達員自身のケガに対する見舞金は、公開されている範囲でこうなっています。

出前館Uber
死亡1,200万円1,000万円+葬式費用最大100万円
後遺障害最大1,200万円最大1,000万円
医療25万円限度額50万円
就業不能・入院7,500円/日(最大60日)7,500円/日(60日限度)

Uberには入院一時金もあり、ヘルメットを装着していた場合は2万円、非装着の場合は5,000円と差がつけられています。安全装備が金額に反映される設計です。

出前館が任意保険の加入を必須にしているのは、裏を返せば自社の補償を上乗せとして位置づけているということです。本体はあくまで自分の保険、という考え方が読み取れます。

過失0では示談を任せられない

ここまでは、自分が加害者側になったときの話でした。対人・対物賠償はそのための備えです。

ただ配達員には、逆向きの穴もあります。自分に過失がない事故ほど、示談交渉を保険会社に任せられないという構造です。

損保ジャパンは、対人・対物の賠償事故では自社が示談交渉を行うとしたうえで、過失がない場合は法律の規定により示談交渉ができず、自分で交渉することになると案内しています。

根拠は弁護士法第72条です。弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁じています。過失0は自社が賠償金を払わないということなので、代わりに交渉するとこれに触れます。

つまり信号待ちで追突されたような、こちらに落ち度がまったくない事故ほど、相手の保険会社と一対一で向き合うことになります。理不尽に感じますが、仕組み上そうなっています。

なお動かせないのは相手方との示談交渉で、自分の契約にもとづく保険金の請求や事故の相談まで止まるわけではありません。

そしてこの構造が一段効いてくるのが、過失割合です。割合は警察が決めるものではなく、当事者どうしの話し合い、実務では双方の保険会社の交渉で決まります。

ところが過失0を主張している側には、交渉してくれる自社の保険会社がいません。割合を争う場面で、交渉役が自分しかいないということです。

問題は、その一対一が対等ではないことです。弁護士費用特約は付けておくべき、という声は繰り返し出ています。交渉が長引いた末に弁護士を立てた、という報告も複数あります。

個別の事情はさまざまなので一般化はできませんが、勧める向きが多いのは確かです。仕組み上そうなっている、で片付けきれない部分だと思います。

しかも東京海上日動は、賠償事故のうちもらい事故が約3件に1件の割合で起きていると推計しています(2024年度事故統計等から)。珍しい形ではありません。

弁護士特約が埋める空白

ここを埋めるのが弁護士費用特約です。東京海上日動のTAPだと、補償の中身はこうなっています。

用途限度額(1事故・1名あたり)
相手方への損害賠償請求300万円
対人事故の刑事事件等への対応原則150万円
法律相談費用(全契約に自動セット)10万円

配達員に効くのはこの3点です。

  • 走行距離が長い … もらい事故に当たる回数が増える
  • 物損だけの案件 … 自腹で頼むと修理費より高くつく
  • 加害者側の刑事対応 … 人身事故を起こしたときも対象

3つ目は見落とされがちです。人身事故を起こすと、賠償とは別に刑事手続きが走ります。対人賠償はそこを見てくれません。

なお「日常生活・自動車事故型」は記名被保険者が個人の場合に契約できる、という条件が付いています。開業していても記名被保険者は個人なので、配達員はこちらを選べます。法人化している場合は自動車事故型のみです。

家族の契約に付いている特約を使える場合もありますが、補償を受けられる方の範囲は会社と型で違います。自分の契約に付けておくのが確実です。

そして特約は本体の契約があって成り立つものです。用途を伝えないまま契約していると、賠償も弁護士特約も、次の節で見る人身傷害も、まとめて効かなくなる可能性があります。ここも前の節と地続きです。

自分のケガは誰が見るか

ここまで見てくると、相手への賠償より、自分のケガのほうが手薄になりがちだと分かります。

自分のケガをカバーしうるのは、大きく4つです。

  • 任意保険の人身傷害保険(自分の過失に関係なく支払われる)
  • 自損事故傷害特約(相手のいない事故のみ・定額)
  • プラットフォームの補償(案件を持っている間だけ)
  • 労災保険の特別加入(配達員も任意で入れる)

このうち人身傷害は、契約時に外していると存在しません。バイクの契約では付けていない人もいるので、証券で確認しておきたい項目です。

そして案件を持っていない時間帯は、プラットフォームの補償が届きません。その空白を埋める選択肢が労災の特別加入で、こちらは「配達中にケガで走れない。その間の収入、労災「特別加入」で補える?」で詳しく整理しています。

なお、実際に事故が起きたときの手順は「配達中に事故。「物損でいいですよ」に頷く前にやること」にまとめました。警察に届け出ておかないと交通事故証明書が取れず、ここで並べた補償の請求が難しくなります。

正直、ここまで並べると備えが多すぎて面倒に感じますが、全部入る必要はありません。どこが空白になっているかを一度把握しておくだけで、優先順位はかなりはっきりします。

まとめ

  • 自賠責は人身のみ。物損も自分のケガも対象外で、傷害の限度額は120万円
  • 通販型2社は有償で貨物を運ぶ車両を引き受けない。「入れない」のではなく、相談先が事業者向けの商品と代理店に変わる
  • ファミリーバイク特約は、業務使用の可否と弁護士特約が及ぶかの2軸で自分の約款を確認する
  • 使用目的は使用実態に従って申告する。月15日は区分の線であって、配達に使ってよいかの線ではない。危ないのは安い区分に留まること
  • プラットフォームの補償は稼働時間ではなく案件に紐づく。Uberは鳴り待ちと帰宅が対象外、出前館は任意保険が必須、ロケットナウは事故を自己責任と明記
  • 過失0のもらい事故は保険会社が示談交渉できない。交渉役が自分しかいなくなる空白を弁護士特約が埋める(加害者側の刑事対応も対象)
  • 自分のケガは手薄になりやすい。人身傷害と労災特別加入で空白を確認する

保険商品の内容や引受条件は改定されることがあります。加入や見直しの前に、下記の公式情報と、契約している会社の約款で最新をご確認ください。

出典


本記事は一般的な情報の整理です。個別の加入可否・補償範囲は、各保険会社の約款と各プラットフォームの公式情報でご確認ください。

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