配達員の確定申告
雑所得と事業所得、どちらで申告するか
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収入が増えてくると「青色申告の方が節税になると聞いたが、自分も使えるのか」という疑問が出てきます。
結論から言うと、雑所得では青色申告は使えません。 青色申告が使えるかどうかは、まず自分の報酬がどの所得区分に当たるかで決まります。「青色か白色か」を考える前に、そこから確認していきます。
副業か専業かでは決まらない
配達報酬の所得区分は「副業なら雑所得、専業なら事業所得」と説明されることが多いですが、副業か専業かだけで決まるわけではありません。
国税庁は、社会通念上「事業」と言えるかどうかを、帳簿書類を作成・保存しているか、収入の規模、継続性・営利性などから総合的に判断するとしています。
そして青色申告が使えるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある人だけです。雑所得にはそもそも青色・白色という区分がなく、青色申告特別控除などの特典も使えません。
業務委託と給与の違いや扶養の線引きなど、所得区分の手前にある働き方の整理は「フードデリバリー配達員の税金・社会保険」にまとめています。
判断の入り口は帳簿
雑所得と事業所得を分ける、法律上の明確な金額基準はありません。ただ、国税庁は2022年の通達改正で判断の目安を示しています。
| 記帳・帳簿書類 | 区分の目安 |
|---|---|
| 保存している | 概ね事業所得 |
| 保存していない | 業務に係る雑所得(収入300万円超で事業の実態があれば個別判断) |
帳簿をつけて保存していれば、収入が300万円を超えていても下回っていても、目安はどちらも事業所得です。先に見られるのは金額ではなく帳簿です。
300万円が出てくるのは帳簿がない側だけです。「副業で300万円以下なら事業として認められない」と説明されることがありますが、金額を基準にする案は通達改正の過程で採られず、帳簿書類の保存が判定の軸になりました。
ただし帳簿があっても、収入が例年300万円以下で主な収入の1割にも満たない場合や、赤字続きで黒字化の取り組みもない場合は、個別に判断されます。帳簿は入り口であって、つければ必ず事業所得になるわけではありません。
逆に言えば、専業で稼働していても自動的に事業所得になるわけではなく、副業でも帳簿をつけて事業として続けていれば事業所得として申告できる余地があります。判断が難しい場合は税務署や税理士に確認するのが確実です。
事業所得なら青色申告が使える
事業所得として申告する場合、税務署に「青色申告承認申請書」を提出すると青色申告を選べます。開業届とあわせて出すのが一般的です。
期限は、新たに開業した場合は開業から2か月以内、すでに稼働している場合は青色にしたい年の3月15日までです。
見落としがちなのが、この申請期限です。年初からすでに配達で稼働している人が3月15日を過ぎてから申請した場合、青色が使えるのは翌年分からです(1月16日以後に新たに開業した場合は、開業から2か月以内ならその年分から使えます)。
青色申告特別控除
所得から最大65万円を控除できます。控除額は帳簿のつけ方と申告方法で変わります。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+e-Tax申告(または優良な電子帳簿保存) |
| 55万円 | 複式簿記+紙で申告 |
| 10万円 | 簡易な記帳でも可 |
なお、この控除体系は2026年分までです。2027年分(令和9年分)からは、複式簿記+e-Taxの65万円に加え、訂正削除履歴の記録などの要件を満たす優良な電子帳簿を保存していれば最大75万円まで伸びます。
一方で簡易簿記の10万円は、前々年の収入金額が1,000万円を超えると控除対象外になります。改正後の全体像と申請の段取りは「配達員の確定申告、年間スケジュールでまるごと整理」の表が詳しいです。
少額減価償却の特例
青色申告をしている個人事業主などを対象に、40万円未満の資産(バイク・スマホなど)をその年に一括で経費計上できる制度です(年間合計300万円まで)。2026年3月31日以前に取得した分は、30万円未満が対象です。
複式簿記と聞くと身構えますが、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを使えば帳簿の手間はある程度軽減できます。
雑所得なら通常の申告になる
雑所得の場合、青色・白色という区分がなく、通常の確定申告書で収入と経費を申告します。青色申告特別控除のような特典はありません。
ここで誤解されやすいのが経費です。「事業所得にできないなら経費は使えない」と説明されることがありますが、そうではありません。雑所得でも、収入を得るために直接要した費用は必要経費として差し引けます。
差が出るのは控除と赤字の扱いです。青色申告特別控除が使えず、赤字を給与などほかの所得と相殺したり翌年へ繰り越したりもできません。経費そのものが否定されるわけではないので、レシートを捨てる理由にはなりません。
帳簿の義務も原則ありません。ただし前々年の業務収入が300万円を超えると請求書・領収書などを5年間保存する義務があり、1,000万円を超えると収支内訳書などの添付も必要になります。
義務の有無にかかわらず、収入と経費の記録は残しておくのがおすすめです。帳簿といっても、出発点は日々の売上と経費の記録です。稼働のたびに記録している人は、それがそのまま帳簿の土台になります。
申告がスムーズになるうえ、将来事業所得に該当する実態になったとき、この記録の習慣がそのまま青色申告の要件につながります。
まとめ
| 状況 | 所得区分の目安 | 申告 |
|---|---|---|
| 帳簿をつけていない | 雑所得 | 通常の申告(青色は使えない) |
| 帳簿をつけて保存し、事業として継続 | 事業所得の余地 | 青色申告が使える |
「青色申告を使いたい」という場合、まず自分が事業所得として申告できるかの確認が先です。その入り口になるのが帳簿です。
いま雑所得に当たる場合も、日々の収入と経費の記録を習慣にしておくと、計上漏れが減り、事業所得に該当する実態になったときの移行もスムーズになります。
経費の考え方については配達員が知っておきたい経費の基本、確定申告の要否については副業配達員の確定申告:20万円ルールと住民税の落とし穴を見てください。
出典(国税庁・中小企業庁)
- No.1500 雑所得
- 雑所得の範囲の取扱いに関する通達改正(令和4年)
- No.2072 青色申告特別控除
- 令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?(国税庁・PDF)(2026-08-26確認)
- 青色申告承認申請手続
- 少額減価償却資産の特例(中小企業庁・PDF)(2026-08-26確認)
※この記事は一般的な情報の整理であり、個別の申告内容を保証するものではありません。制度は改正されることがあります。所得区分の判断は個々の状況によって異なるため、判断に迷う場合は国税庁の公式情報・税務署・税理士に確認してください。