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配達スマホの熱暴走、
まずは濡れ布?
ファン・ペルチェを買う前に

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Dice

現役配達員が運営

配達スマホの熱暴走、まずは濡れ布?ファン・ペルチェを買う前に試すこと
この記事の目次
  1. 1.止まるのはナビだけではない
  2. 2.メーカーの上限は35℃
  3. 3.冷やす前に減らせる熱がある
  4. 4.濡れ布がなぜ効くのか
  5. 5.水をスマホへ回さない
  6. 6.ファンとペルチェはどうか
  7. 7.温度より止まった回数を見る
  8. 8.モバイルバッテリーも夏に弱る
  9. 9.まとめ
  10. 10.出典

スマホクーラーを買う前に、濡らした布で足りるのではないか。夏の稼働ではよく話題になります。

実際、配達員の間で今シーズン広がっているのは、ファンでもペルチェでもなく、スマホホルダーの背面に濡れた布を当てておく方法でした。冷感タオルやハンカチを絞って使う人が多いようです。

原始的に見えますが、原理を追うとかなり筋が通っています。ここでは熱暴走で実際に何が止まるのかを押さえたうえで、濡れ布がどこまで期待できて、どこが限界なのかを整理します。

止まるのはナビだけではない

熱暴走というと、ナビが落ちる話だと思われがちです。実際にはもっと広い範囲が制限されます。

Appleは、デバイス内部の温度が通常の動作温度範囲を超えたときに起こりうる変化を公開しています。配達の作業に置き換えると、効き方はこうなります。

メーカーが挙げる変化配達で起きること
充電が遅くなる、停止するモバイルバッテリーを挿しているのに残量が減っていく
ディスプレイが暗くなる、何も表示されなくなる直射日光下でさらに見えない
無線が低電力状態になり電波が弱くなることがある案件の受信や完了報告が通りにくくなる
カメラのフラッシュやその他のカメラ機能が一時的に無効になる置き配の完了写真が撮れない
一部のアプリでフレームレート低下や処理時間の増加アプリの操作が一拍遅れる

現場で一番こたえるのは、カメラが止まることではないでしょうか。置き配は完了写真の撮影が前提の運用です。ドロップ地点に着いてカメラが開かないと、その場で冷ますしかなくなります。

ナビについては、Appleが挙動を明記しています。ナビの使用中に「温度:iPhoneを冷やす必要があります」という警告が表示され、ディスプレイがオフになる場合がある。ただし音声による経路案内は引き続き機能し、曲がり角に近付くとディスプレイが発光する、とされています。

つまりナビは完全には死にません。先に失うのはカメラと通信の安定で、そちらの方が配達には効いてきます。

Androidも考え方は同じです。Googleは、Pixelが過度に熱くなると低電力モードに切り替わり、一時的にパフォーマンスを制限して特定の機能を一時停止する、と説明しています。

メーカーの上限は35℃

前提として押さえておきたいのが、想定されている温度です。

AppleはiPhone/iPadについて、周辺温度が0℃〜35℃の場所で使用するように設計されていると明記しています。GoogleもPixelについて同じ0℃〜35℃を挙げています。

一方、気象庁の予報用語では日最高気温35度以上の日を猛暑日と呼びます。2026年4月には、最高気温40℃以上の日の名称を「酷暑日」に決定したことも発表されました。

並べると、意味がはっきりします。猛暑日は、気温だけでメーカーの想定上限に届いている日です。そこに直射日光、GPSと画面の常時オン、給電が上乗せされます。

ここが冷却の位置づけを決めます。夏の配達で使う冷却手段は、余裕を作るための道具ではありません。すでに上限を超えている状態を、なんとか範囲内に押し戻すためのものです。

期待値を上げすぎると、何を使っても「思ったほど効かない」となります。

冷やす前に減らせる熱がある

順番として、冷やすより発熱を減らす方が先に効きます。しかも費用がかかりません。

AppleとGoogleがそろって「避けること」として挙げているのは、次のような使い方です。

  • 暑い日に車内へ放置する
  • 直射日光下に長時間放置する
  • 暑い場所や直射日光下でGPSやナビを長時間使い続ける
  • 充電しながら高負荷の処理を続ける

配達は、下2つを毎日やる仕事です。ナビを開いたままモバイルバッテリーで給電し続ける状態は、メーカーが名指しで避けろと言っている条件に正面から当たります。

現場でよく挙がる対策も、だいたいこの線に沿っています。

  • ワイヤレス充電をやめて有線にする … 発熱源をひとつ減らせる
  • 給電を差しっぱなしにしない … 鳴り待ちの間だけ止める
  • 背面に穴の空いたケースにする … 熱の逃げ道を作る
  • 見ていない時間は画面を消す … 店舗待ちの数分でも変わる

ワイヤレス充電は便利ですが、夏場は発熱が上乗せされます。Appleもワイヤレス充電を、デバイスが温かくなる状況のひとつとして挙げています。夏だけ有線に戻す人は少なくありません。

ホルダー用のサンバイザーで直射日光を切る、夏場は厚いケースを外すといった対策は夏の配達対策:日焼け・熱中症・スマホ熱暴走でも触れています。道順を覚えてナビの表示時間を減らすことも、発熱と電池消費の両方に効きます。

小ネタですが、Appleは日焼け止めをiPhoneに付けないよう注意を促しています。夏の配達では手に日焼け止めが付いた状態で画面を触ることになるので、頭の片隅に置いておくとよさそうです。

濡れ布がなぜ効くのか

ここからが本題です。濡らした布が冷やす仕組みは、風を当てるのとは違います。

環境省は暑さ指数(WBGT)の解説のなかで、湿球温度について説明しています。湿球温度は水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測するもので、温度計の表面にある水分が蒸発した時の冷却熱と平衡した時の温度である。そして空気が乾いたときほど、気温(乾球温度)との差が大きくなる、とされています。

つまり、濡らした布を巻いた物体は気温より低い温度で釣り合います。単に冷たい水を当てているのではなく、水が乾いていく過程そのものが冷却です。

これは送風だけでは届かない領域です。乾いた空気をいくら当てても、行き着く先は気温止まりだからです。しかも冷却源の水が最初から外側にあるので、冷やしすぎて内部が結露するという経路もありません。

順番が逆なのも面白いところです。蒸発は風で進むので、気化熱は走行中に強く、停車中に落ちます。無風の待機中に効くファンとは、ちょうど裏返しの性質になります。

弱点もはっきりしています。

  • すぐ乾く … 給水が前提。霧吹きやペットボトルを持ち歩く
  • 湿度が高い日は効きが落ちる … 乾いた空気ほど差が大きい、の裏返し
  • 手間が増える … 乾いたら濡らす、を稼働中に繰り返す

現場からも、この方法に切り替えてから熱による画面の暗転がほとんど出なくなった、という報告が上がっています。どれくらい下がるかは布の素材や水の量、湿度、風で変わりますが、布と水だけで始められて電源も要りません。足りなければ、そのとき機器を買えば済みます。

水をスマホへ回さない

濡れ布で最も注意したいのは、冷却力ではなく水濡れです。

Appleは液体による損傷をApple製品1年限定保証の対象外としています。Googleも、Pixelは防水設計だが通常使用での摩耗によって防水性能が低下することがあるとして、水濡れにつながる使い方を控えるよう案内しています。等級があっても、水をかけながら使ってよいという意味ではありません。

試す場合も、本体を布で包むのではなく、ホルダーの背面側に置く形が前提です。

  • 布は水が滴らない程度に絞る
  • 充電端子やケーブルの接続部から離す
  • 水が端子側へ流れる向きになっていないか確認する
  • 走行中にずれたり落ちたりしないよう固定する
  • 端子やケーブルが濡れたら有線充電しない

最後の項目はメーカー側も想定していて、Appleはコネクタやケーブルの内部で液体を検知すると、乾くまで充電やアクセサリの接続ができなくなると案内しています。濡れた状態で無理に挿すのは避けたいところです。

保冷剤や氷水で急激に冷やす方法も、この文脈では別物として扱ってください。端末の表面温度が周囲の露点を下回れば結露します。濡れ布は「冷たさ」を当てる方法ではなく、蒸発を使う方法です。

ファンとペルチェはどうか

市販の冷却グッズも触れておきます。買ってから「効かない」となりやすい部分です。

ファンは背面にクリップで留めて風を送るタイプです。構造が単純で水濡れの心配は少ない一方、当てているのは外気なので、それだけで気温より下げることはできません。効くのは調理待ちや鳴り待ちなど、風が当たらず熱がたまる場面です。走行中はもともと走行風があるので、上乗せは小さくなります。

ペルチェは電気で熱を反対側へ移す部品で、気温より下に冷やせます。ただし冷える面の裏は必ず発熱するので、放熱が追いつかないとクーラー自体が熱源になります。現場でも、日陰や屋内では効くが炎天下では追いつかない、という評価をよく聞きます。

さらにペルチェには結露の問題があります。Appleは水濡れによる損傷を防ぐために避けるべき行為として、推奨される温度範囲外、または極度に湿度の高い条件下での動作を挙げています。冷やしすぎると、その条件に自分から近づくことになります。

どちらも電源が要る点も共通です。多くはモバイルバッテリーから給電するので、そのバッテリーも夏の高温にさらされます。

まとめると、順番はこうなります。発熱を減らす → 濡れ布 → ファン → ペルチェ。手間と費用が小さい方から試して、足りなければ次へ進む形が無駄になりません。

温度より止まった回数を見る

効果を確かめるときのコツがあります。スマホ表面が何度になったかは、配達では重要ではありません。受注・連絡・ナビ・撮影を止めずに済んだかどうかが本題です。

冷却なしの日と濡れ布の日を、できるだけ近い気温・天気・時間帯でそろえて比べます。

記録すること見るポイント
天気・時間帯気温、晴天か曇天か、湿度
使用条件画面輝度、ケース、充電の有無
温度による制限画面の暗転、警告、充電停止の回数
電池稼働開始時と終了時の残量
濡れ布濡らし直した回数、ずれや水滴の有無

湿度を記録に残しておくのがポイントです。気化熱は乾いた日ほど効くので、効かなかった日が「方法が悪い」のか「湿度が高かった」のかは、それがないと切り分けられません。

一日で決めず、条件の近い稼働を数回比べると判断しやすくなります。

モバイルバッテリーも夏に弱る

冷却グッズを足すと、電源としてモバイルバッテリーの出番が増えます。ここも夏は注意が要ります。

NITE(製品評価技術基盤機構)は2026年7月15日、リチウムイオン電池搭載製品の事故について注意喚起を出しています。2021年から2025年までの5年間に通知された事故は2140件で、モバイルバッテリーが最多、事故は8月にピークを迎える傾向があるとされています。

対策として挙げられているうちのひとつが、高温となる場所では使用・保管しないことです。

Appleも、駐車中の車内は高温になることがあるのでデバイスを車内に置いたまま放置しないよう促しています。車やバイクで配達している人は、待機中にスマホとモバイルバッテリーを車内へ置きっぱなしにしない、というだけでもリスクが下がります。

バッグの中で直射日光に当たり続ける置き方も、避けたいところです。

まとめ

熱暴走で失うのはナビだけではありません。カメラが止まれば置き配の完了写真が撮れず、通信が弱くなれば案件の受信にも響きます。

メーカーの想定上限は0℃〜35℃で、猛暑日はそれだけで上限に届きます。冷却は余裕を作るためではなく、超えた分を押し戻すためのものだと考えると期待値を外しません。

まず費用のかからないところから。直射日光を切る、給電と高負荷を重ねない、ワイヤレス充電をやめる。そのうえで濡れ布は、気温より低いところで釣り合うという原理があり、結露の心配も少なく、布と水だけで始められます。

ただし何度下がるかまでは分かっていません。乾いたら濡らす手間も残り、湿度の高い日には落ちます。効果が保証された方法ではなく、最初に試す価値が高い方法として受け取るのが正確です。

夏は稼ぎやすい季節です。だからこそ、止まらない状態を保つことが、そのまま実働時間を守ることにつながります。


※濡れ布による冷却は、スマートフォンメーカーが推奨する使用方法ではありません。水濡れや落下による損傷を避け、端末とアクセサリーの取扱説明書を確認したうえで判断してください。

出典

※デバイスの仕様や挙動は機種・OSバージョンによって異なります。冷却グッズの使用は各製品の説明に従ってください。本記事は一般的な情報の整理であり、機器の故障や保証の可否について保証するものではありません。判断に迷う場合は各メーカーの公式情報をご確認ください。

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