原付の二段階右折
迷うのは3車線のときだけ
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この記事の目次
原付一種で走っていると、交差点の手前で「ここは二段階右折か、そのまま曲がっていいのか」と一瞬迷う場面があります。
ただ、判断の順番そのものは道路交通法で決まっています。しかも車線を数えるのはいちばん最後で、そこまで来る前に決着する交差点のほうが多い。
そのまま曲がるほう——自動車と同じように、あらかじめ中央に寄って交差点の中心の内側を回る方法を、法令では「小回り」と呼びます。この記事でもその呼び方を使います。
見る順番と数え方、そして怠ったときに何が乗るのかを、条文と警察庁の基準で整理します。
判断は4段で決まる
先に結論から。原付一種(2025年4月からの新基準原付を含む)の右折方法は、上から順にこれで決まります。
- 交通整理が行われていない交差点 … 小回り。車線の数は関係ない
- 「小回り」の標識がある … 小回り
- 「二段階右折」の標識がある … 二段階
- 標識がなく、自分の側の車線が3本以上 … 二段階(2本以下なら小回り)

根拠は道路交通法34条5項です。原付が二段階右折をしなければならないのは、標識で指定された道路か、車両通行帯が3以上ある「多通行帯道路」のどちらかで、しかも交通整理の行われている交差点で右折するときに限られます。
原付二種はこの条文の対象外なので、以下は原付一種の話です。排気量が50ccを超えていても、新基準原付であれば原付一種と同じ扱いになります。
交通整理がなければ小回り
まず1段目。34条5項には、括弧書きでこう限定が入っています。「交通整理の行われている交差点において右折する場合に限る」。
交通整理とは、信号機か、警察官・交通巡視員の手信号によるものを指します。信号も警察官もいない交差点なら、車線が3本以上あっても小回りです。
そして、この括弧書きがかかっているのは多通行帯道路だけではありません。標識で指定された道路も同じ。二段階右折の標識が立っている道路でも、交通整理のない交差点なら小回りになります。
こちらは実際に出くわす形です。警察庁の交通規制基準によると、二段階右折の標識は交差点ごとに立てるほかに、交通整理の行われている交差点を2つ以上含む道路の区間へまとめて指定することがあります。区間の中に交通整理のない交差点があれば、標識のある道路を走っていても、その交差点で二段階右折の義務は生じません。
標識そのものの定義も「交通整理の行われている交差点における右折につき指定する」となっているため、条文と標識令の両方から同じ結論になります。
深夜に黄点滅や赤点滅へ切り替わる交差点も気になるところ。ここは警察庁の交通規制基準が先回りしていて、二段階右折をする交差点では信号機の点滅運用を行わないこと、とされています。点滅へ変わる交差点が二段階の対象になっている状況は、基準上は想定されていません。
標識は50〜100m手前の左
2段目と3段目は標識です。関係するのは2種類あります。
- 一般原動機付自転車の右折方法(二段階)/327の8 … その交差点は二段階
- 一般原動機付自転車の右折方法(小回り)/327の9 … その交差点は小回り
「原付一種なのに二段階右折しなくていい標識なんてあるのか」という質問が出ることがありますが、あります。三差路やスクランブル交差点など、二段階で待つスペースが確保できない交差点に付けられるものです。3車線以上でもこの標識があれば小回りになります。
ただし、基準どおりに付いているとは限りません。二段階で待つスペースがない三差路なのに小回りの標識がない、という報告もあります。
ややこしいのは呼び名のほうです。この2つは同じ記号の肯定形と否定形になっています。
青地の丸に白の「↑」「→」「原付」が二段階。その記号を赤い縁と斜めの帯で打ち消したものが小回りです。

見た目が「二段階右折の記号に×」なので、現場では**「二段階右折禁止」の標識**として認識されていることが多い。正式名称の「小回り」で覚えている人のほうが少ないと思います。名前は違っても対になっている、とだけ押さえておくと話が噛み合います。
そして、この標識は突然現れるわけではありません。警察庁の交通規制基準では、設置場所が交差点の手前おおむね50〜100メートル、道路の左側の路端と決まっています。
比較すると、路面の矢印(進行方向別通行区分)の規制区間は交差点の手前おおむね30〜50メートル。標識のほうが先に来る、という順番になります。
見る場所と距離が決まっているぶん、探せるものではあります。とはいえ左端の低い位置にある標識を走りながら注視するのはしんどい、という声も実際に出ています。
数えるのは車線の本数
標識がなければ4段目、ようやく車線を数えます。条文が数えろと言っているのは「道路の左側部分(一方通行となっている道路にあっては、道路)に設けられた車両通行帯」の数です。
ここから3つ落とし穴があります。
- 対向車線は数えない。中央線から自分の側だけ。一方通行なら道路全体
- 直進が3車線ある必要はない。左折専用・直進・右折専用に分かれていても、合計3本なら該当する
- 交差点の手前だけ右折レーンが増えて3本になる道路も該当する。手前の見た目で決め打ちすると外す
もうひとつ、矢印との食い違いがあります。矢印が3方向を指していても、車線が2本なら二段階右折の対象ではありません。
路面の矢印は、1つの車線が2方向を兼ねるときは1本にまとめて描かれます。直進と左折を兼ねる車線なら、上と左に頭が出た矢印が1つ。矢印の本数と車線の本数は、そもそも一致しません。
下の図は、どちらも同じ3方向が指定された交差点です。右端の黄色い線が中央線で、その左が自分の走る側になります。

矢印は道路交通法35条の「指定通行区分」という別の規制で、条文はその対象から「二段階右折をすることとされている交差点で右左折する原付」を明文で除いています。矢印はそもそも原付一種の右折方法を決めていない、という建て付けです。
迷うのは3本以上のときだけ
ここまで書いておいて何ですが、車線を数える方法には限界があります。目の前の白線が、法律上の車両通行帯とは限らないからです。
道路標識令で、道路管理者が引いた区画線のうち道路標示とみなされるのは「車道中央線」と「車道外側線」の2つだけ。車線境界線は入っていません。車両通行帯は公安委員会が規制として決めるもので、決めた場合の白線と、そうでない白線は見た目が同じです。
ただし、ずれ方は一方向だけです。条文の定義は「道路標示により示されている道路の部分」なので、線が引かれていなければ通行帯もありません。見た目の車線本数が、法律上の通行帯の数を下回ることはない。
つまり2本にしか見えない道路が、実は3本だった、ということは起きません。見た目2本以下なら、その時点で小回りで確定します。迷う余地が出るのは、3本以上に見えるときだけ。
その3本以上について、警察庁自身がこう書いています。交通規制基準の留意事項です。
片側の車両通行帯が2か3か不明確な道路については、車両通行帯を明確化するための措置をとること。
「どちらとも取れる道路」があるという意味ではありません。答えは決まっているのに、走っている側からは見えない。これが正確なところです。
では走行中にどうするか。同じ基準の車両通行帯の項に、「片側3車線以上の交通整理の行われている交差点の手前」は必ず車両通行帯の意思決定を得ること、という記載があります。基準どおり運用されていれば、信号交差点の手前で3本に見える道路は通行帯として決まっている。見た目で3本あるなら二段階に寄せるのが、実務上いちばん外しにくい寄せ方になります。
どうしても確定させたい交差点は、所轄の交通課に交差点名を出して照会するしかありません。その場で即答が返るとは限らない、というのは織り込んでおいたほうがよさそうです。
待ち方にも決まりがある
二段階右折そのものの手順にも、知らないと引っかかる点が2つあります。
1つは、向きを変えたあと。道路交通法施行令は、交差点で既に右折している原付について「その右折している地点において停止しなければならない」と定めています。向きを変えたらそこで待つ、が条文上の扱いです。
もう1つが矢印信号。
右折の青矢印では進めない
施行令は、二段階右折をする原付を「直進する車両とみなす」と定めています。条文どおり読むと、右向きの青矢印は一段目のゴーサインになりません。直進が青になるのを待つことになります。
前の車が右矢印で流れ始めると、つい続きたくなる場面です。ここは付いていかないほうが安全側に倒せます。
怠ると2つ重なる
外したときに何が乗るか。二段階右折すべき交差点で小回りをすると、まず交差点右左折方法違反です。
| 違反 | 基礎点数 | 反則金(原付) |
|---|---|---|
| 交差点右左折方法違反 | 1点 | 3,000円 |
| 信号無視(赤色等) | 2点 | 6,000円 |
問題は、これが1つで済むとは限らないこと。施行令の青信号の意味は、二段階右折の対象になる原付について「直進または左折ができる」としか書いていません。青で右折すれば、信号の意味に反したことになります。
警察庁が出している自転車向けのルールブックには、同じ構造がはっきり書かれています。二段階右折をしなかったときは交差点右左折方法違反に加えて、信号交差点なら信号無視にもなる、と。自転車と原付は、この条文上の扱いが揃っています。
ただし点数は足し算になりません。同時に2つ以上の違反にあたるときはいちばん高い点数によると施行令に定められているので、この組み合わせなら2点です。それでも1点で済むはずが2点になり、反則金もそれぞれの対象になりえます。取り締まりで止められると、その日の稼働も止まります。
ロスをどう織り込むか
ルールの話はここまでで、あとは実時給の話。二段階右折が嫌われるのは、危ないからというより待ちが伸びるからです。直進で渡って向きを変え、次の青を待つ以上、条件によっては信号2サイクル分持っていかれます。
回避策としてよく出るのが、降りて押して横断歩道を渡る方法です。押している間は歩行者扱いになるので手としては成立しますが、渡っている途中で信号が変わってかえって遅くなった、という報告もあります。エンジンの扱いや、三輪の原付では押しても歩行者にならない点は「通れると思ってた道が反則金に」で整理しています。
現実的に効くのは、交差点単位でしのぐより右折そのものを減らすルート取りのほうだと思います。考え方は「配達の道順:ナビに頼らず1件を速く終わらせる」にまとめています。
縛りごと外す選択肢もあります。原付二種にすれば二段階右折も30km/h制限もなくなり、ミニカー登録の三輪も同じく対象外になります。ただし車両価格や免許のコストと引き換えなので、エリアによって効き方が変わる話です。「配達バイクの選び方」で車種ごとに比較しています。
車体が125ccクラスでも、新基準原付として登録されていれば原付一種と同じ扱いで二段階右折の対象です。この区分のねじれは「新基準原付はなぜ30キロ制限のまま?」で扱っています。
まとめ
交差点の手前で見る順番は、この4つ。
- 交通整理があるか。信号も警察官もいなければ小回り
- 「小回り」の標識があるか。あれば3車線以上でも小回り
- 「二段階右折」の標識があるか。手前50〜100メートル、左の路端
- 自分の側の車線が3本以上か。矢印の数ではなく車線の本数
4まで来ても、2本以下に見えるなら小回りで確定です。迷いが残るのは3本以上に見えるときだけで、そこは二段階に寄せておくほうが外しません。切符1枚で稼働が止まることを考えれば、右折1回のロスのほうが安く付きます。
出典
- e-Gov法令検索「道路交通法」第34条第2項・第5項(小回りと二段階右折の方法、多通行帯道路と交通整理の要件)、第35条第1項(指定通行区分から二段階右折の原付を除く規定)、第2条第1項第7号(車両通行帯の定義)
- e-Gov法令検索「道路交通法施行令」第2条(青信号・赤信号・青矢印における二段階右折の原付の扱い)、別表第二(交差点右左折方法違反1点・信号無視2点、備考=同時に2以上の違反行為に当たるときは最も高い点数による)、別表第六(原付等の反則金3,000円・6,000円)
- e-Gov法令検索「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」第7条(道路標示とみなす区画線は車道中央線と車道外側線のみ)、別表第一(327の8「二段階」・327の9「小回り」の意味と設置場所)、別表第二(両標識の様式)
- 警察庁「交通規制基準」(PDF・2026年9月1日確認)第15 車両通行帯(車線境界線があっても公安委員会の意思決定を要すること、片側3車線以上の信号交差点手前の扱い)、第24 進行方向別通行区分(規制区間30〜50メートル)、第40・第41 一般原動機付自転車の右折方法(設置位置50〜100メートル、道路の区間にわたる指定、片側の車両通行帯が2か3か不明確な道路への措置、二段階右折の交差点で信号機の点滅運用を行わないこと)
- 警察庁「自転車ルールブック」(PDF・2026年9月1日確認)(交差点右左折方法違反の反則金3,000円と、信号交差点で二段階右折をしなかった場合の信号無視の重複)
- 車両通行帯や右折方法の指定は各都道府県公安委員会によります。現地の標識と道路標示を必ず確認してください。制度は改正されることがあるため、最新の公式情報をご確認ください。
※本記事は一般的な情報の整理です。交通ルールの適用は交差点の状況により異なります。交通ルールは必ず順守してください。